猫の日(六年ver.)[1/1]



「猫の日だな、文次郎。」

「猫の日?」


小平太を除く皆で集まっていたときに、なんとなく思い出したことについて文次郎に同意を求めてみた。
なんだそりゃ、と顔を歪められたので文次郎にググれ、と諭した。
あぁ、こいつに同意を求めたのが悪かった。

ん?あぁ、小平太はいけどん中だ。そのうち来るであろう。


「にゃん、と語尾につけて話そうではないか。」


いいだろう、猫の日なのだから。
こんな面白そうな日を逃すわけにはいかないだろう。

だってお前、考えてみろ。
文次郎がにゃん、だぞ?あの顔でにゃん、と言うのだぞ?

あ、想像したら笑いが…っ。


「わ、楽しそう!留三郎、ぼくらも参加しようよ。」

「えぇ!?おれもやんのかよ。」


ほう、伊作はなかなかノリが良いな。


「ねぇ、仙蔵。仙蔵もやるんでしょ?」

「あぁもちろんだ。言い出しっぺだからな。語尾ににゃんだぞ、わかったにゃん?」

「わかったにゃーん。」

「ほれどうした留三郎。お前も喋れにゃん。」

「いやいやいや!お前らは違和感ないかもしれないけど、おれは似合わねえから! …………にゃん。」


これだから留三郎は。
そんな冷めた目でじとりと睨めば、観念したようににゃんと呟いた。


「長次もやるか?あの鍛練馬鹿なら気にする必要はないにゃん。」

「…………やっても、いい。にゃん。」

「わあ、珍しいもの見ちゃ、」

「いっけどーん! 面白そうなことやってるんだな!」


取って付けたようにも聞こえたがまあ良かろう。
そして伊作はこんなときでも不運発動で台詞が被った。
犯人は襖をすっぱーん!と派手な音をたてて開けたいけどん、おっと間違えた小平太だ。

というか、ここはわたしの部屋なのだが、襖が壊れたらどうしてくれるのだ。
文次郎も同室だろ、だと?知らん。


「語尾ににゃん、とつけて話すのだにゃん。」

「へー、そうなのか!仙ちゃん可愛いな。」

「褒めてもなにもでないぞ。それよりにゃんをつけろにゃん。」

「いけいけにゃんにゃーん!」

「おい、文次郎。お前もいい加減空気を読まんか、阿呆。」

「仙蔵、語尾忘れてるにゃん。」

「にゃんにゃーん。」

「な、そもそも男がにゃ、にゃ、……とにかく、そんな馬鹿らしいこと誰がやるか。」

「羞恥を捨てろ、バカタレ。」


全くこれだから文次郎は。
阿呆のはや小平太はともかく、このわたしや長次までにゃんにゃん言っているというのに。


「バカタレって言うな!」

「バカタレにバカタレと言ってなにが悪い。悔しいなら言ってみろ。ほーら一言だぞ、にゃーんにゃーん。」


小馬鹿にしたようなわたしの物言いにカッ、と顔を朱に染めている文次郎。
実に気分が悪い。


ふう、と一息ついて部屋を見回した。
おや 小平太と長次が居らんな。あぁ、バレーと図書当番か。


「おれより優秀なくせにこんなとこと言えねーんだな、だっせーにゃん。」

「な!おれだってそのくらい言えるわ!」

「えー、じゃあ言ってよにゃん。」

「おう、構わねぇよ。にゃ、にゃ、にゃにゃ、にゃ……、にゃん!」

「はい、ありがとうございましたー。留三郎、録れたか?」


ぐ、と親指をたてる留三郎。
ひくひくと肩を震わせ笑いを耐える伊作。
顔をさらに朱に染め、怒りにふるえる文次郎。

実に面白いものが録れた。あとでおとしてもらおう。
会計委員会室の前ででも流すとするか。



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