第二話[1/1]



時を遡ること四年。そう、雅が学園に居た頃に事が起こった。
鉢屋三郎が忍術学園の一年生になったまもなくのこと。当時の彼は今とは正反対な内気で口下手な少年だった。狐の面を被り、俯きがちな姿勢で小さく喋る。それは、たかだか十の子供が気持ち悪いと感じるには充分すぎた。


「……いいん、かい?それが、どうかしたの?」


突然、鉢屋とクラスメイトら数名に呼ばれ、委員会どうするんだ?と問われた。
三郎からすれば、委員会なんてもってのほか。誰がやるものか。という気持ちでいっぱいだ。
もともと口下手で、未だにクラスにすら慣れていないのだ。
委員会なんて、先輩がいるじゃないか。無理無理、わたしには絶対に無理。


「わ、わたしは、いいよ。」


確かにそう言った。やらない、と自分の意思を告げた。


「お前、学級委員長委員会な!よっしゃけってーい!じゃ、あとよろしくな委員長。」


しかし、活発でリーダーシップのあるクラスメイトに強制決定をされてしまった。
今ならばふざけるなよ、わたしはやらない、と言ってのけられるだろう。だが、このときはただ黙って、遊びに行く彼らを眺めるしかなかった。


「わたし、やりたくないよ。」


全員が居なくなったのを確認してからぽつりとこぼす。面と顔の隙間に手を入れて、溢れそうになる涙を拭う。
紙に筆を滑らせて黒板に書かれた委員会名と生徒名を記す。
黒板を綺麗に消してから、職員室に向かい、そこの襖を少しばかり開いた。
先生、とか細く呼べば、笑顔で近付いてくる担任に先ほど写した紙を差し出した。


「ほう、お前が学級委員長か。いいんじゃないか?期待してるぞ、鉢屋。」

「……は、い。」


三郎は虐められているわけでも、嫌がらせをされているわけでもない。
むしろ、天才と謳われ先生からの印象も良い。成績は教科、実技共に群を抜いて良く、い組にいないのが不思議なくらいに優良だ。責任感もそれなりに有り、クラスメイトも信用はしているようだった。
ただ、友と呼べる他人がいないだけ。
なぜ?普通ならばクラスの中心になりそうなものなのに。
答えは簡単。彼の外見が、言動が、雰囲気が、子供の恐怖心や嫌悪感を無意識に引き出している。
だから、三郎の周りに人が集まらないのだ。
そんな三郎が、雷蔵と八左ヱ門に出逢うのはもう少し先の話。兵助や勘右衛門と仲良くなるのはさらに先のこと。



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