い組の底辺[2/3]



「それよりお前いつまで鼻血だらだら垂れ流しにしとくんだ?」

「忘れてた。」


駄目だこいつ、と二人が呆れてる気がする。なんかいたたまれない気持ちになった。
というわけで、そそくさと保険室までやって来たのだが、伊作が居ない。そしてなぜだか左近が居る。
やべぇ、入れねぇ。こんな格好悪い俺を左近ちゃんに見せるだなんてそんな恥ずかしいわ、きゃっ。


「楓先輩?」

「あら左近ちゃん、ご機嫌麗しゅう。」

「え、え、うるわしゅう?あー…っと、とりあえずどうぞ。怪我でもしたんですよね?」

「左近を見ると胸の動悸が治まらな、」

「そういうのは精神科へどうぞ。あと、口を覆ってる手を離してください。声がくぐもって聞こえにくいんで。」


あっれー、今の口説き文句のつもりだったのにな。


「ところで、先輩はなにしにここへいらしたんですか?」

「ところで、伊作はどうした。」

「伊作先輩なら食満先輩とお使いに…、じゃなくて!先輩、怪我はどこですか?」

「いや、なんでもない。怪我なんてしてない。左近に会いたかっただけ。それじゃっ!」


早口に言い捨て、左近の声を背に聞きながら保険室を出た。

なんで伊作居ないんだよ馬鹿野郎!もう留三郎一人に行かせろよ学園長!KYだな本当に、そんなんだからあんたの思い付きは迷惑だって言わ、げふんげふん。え? なに? なんか聞こえた?幻聴だよ気にすんな。

俺があの偉大な学園長先生様を馬鹿にするはずが無いからね。天地がひっくり返ろうと無いからね。ハチの髪がサラストになるくらいあり得ないことだから。


「おー、仙蔵に文次郎!なに、俺のこと待っててくれたの?」

「あぁ、まーな。……鼻血の処理はどうした。」

「汚ならしいな。とりあえず井戸で顔面に水をぶっかけてこい。ついでに制服についた血も落とせ。」

「あ、はい。行ってきます。」


せっかく戻ってきたのに散々な言われようだな。悪いな、同い年のお前らにツンデレされても全然嬉しくないんだわ。五年くらいなら多少イラッとすっけどまぁ笑ってられるな。そしてデレた瞬間愛でる。

井戸で言われた通りに顔面に水をぶっかけて、制服を脱ぎ座り込んでごっしごっしと洗う。だって、ちゃんとやんないとあいつら怒るし怖いし理不尽だし。
あ、俺ヘタレじゃないからね?これ格差社会ってやつだから。い組内ピラミッドの底辺俺だから。うん、仕方ないよね。
成績優秀眉目秀麗な仙蔵がS法発揮して誰も逆らえないので、こいつは言わずもがな頂点。文次郎はその他大多数と共に真ん中のちょい上らへん。

なんでもこのピラミッドの基準は主に成績らしいんだ。お前らの頭の中は勉強することしか考えてないのか。


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