生物委員長様[1/2]
「よう、my sweet honeyたち。」
爽やかな笑顔と共に片手を緩くあげ、中途半端に長い黒髪を下の方で結っている、だらけたような仕草がよく似合う男が生物委員の前に現れた。
六年い組生物委員長柏木楓である。
楓へ対する評価といえば顔が良い、モテる、頭も実技もそれなり、なんか残念、いろいろもったいない、とまぁこんな感じだ。要約すると俗に言う残念なイケメン、それが彼なのだ。 とかなんとか格好良く出だしをきめてみたりする。
どーも、六年い組生物委員長の柏木楓です。 楓くん(はぁと)って呼んでください。 あ、もちろん女子限定で。
ちなみに冒頭の第三者目線のやつ全部俺だから。騙された奴ざまぁワロスワロス。
「楓先輩!今までどこに行ってたんすか!?いい加減に委員長の自覚持ってくださいよ、もう!」
「すまんすまん。つーか、自覚くらいあるよ?さあ、委員長様と崇めるが良いさ。おや孫兵、なにか言いたそうじゃないか。」
「なんですか、マイスイートハニーって。発音良すぎて気持ち悪いです。」
「照れなさんな孫兵ちゃんよ。」
「虫酸が走るんで止めてください。」
「楓せんぱぁい!今日は脱走した毒虫の捜索ですよ。」
またかよ!いい加減にしろよ!ざっけんな! 露骨に嫌な顔をする俺に、孫兵がしゅんと顔を伏せた。
「気にすんな孫兵。ちゃーんと責任もって皆見つけてやんよ!……ハチがな!」
おお、バッチシきまったな。俺の愛しい孫兵が嬉しそうだ。周りに花までとばしちゃって全く可愛いなこの野郎。
しばらくの沈黙のあと、ハチが俺ぇ!?と声を荒げたのを合図にダッシュした。 えー?理由?そんなもん俺が虫嫌いだからに決まってんだろーが。
それから誤解の無いように言っておくがな、孫兵とはそういう関係じゃないから。下級生は俺の嫁。異論は認めない。
そういえば、仙蔵のとこの三年にあと一年でお前は俺の嫁から外れてしまうな、あぁ次の一年が楽しみだ、と言ったところあんたは卒業してください、と冷めた目で言われてしまった。さすが作法マジ歪みねぇ。 でもその冷めた目もぞくっとしたぜ。素敵!踏んで!いやいやいや、俺はMじゃないぞ、断じて。
「楓せんぱぁぁあいっ!!」
「ぎゃぁぁあぁあぁぁぁあぁあ!!来んな馬鹿ぁぁあ!!虫連れてくんじゃねぇよっ!!虫籠置きやがれぇぇえぇぇぇえ!!」
「楓先輩が止まったら置きますよ!だから止まってくださいってばぁぁぁあ!!」
1/8
*prev│next#
|