田村三木ヱ門[1/1]



派手な音をたてて砲弾を飛ばす石火矢、もといユリコ。
彼女の傍らには火器等の過激な武器が大好きなユリコの持ち主、田村三木ヱ門がいる。


「田村、今平気?ちょっとここんとこわかりやすく説明してもらえないかな。」

「桜崎先輩!」


そんな田村に後ろから声を掛けたのは私、桜崎雅。
一応、くのたま六年なんだけど、どうにも火器の類いが全く理解できない。
この前、立花と潮江に教えて貰ったらそんなのもわからんのか、三年の内容だぞ、と爆笑された。

わからんよ。わからんから聞いたんだよ。

ふて腐れながら競合地区で案山子を二体ズタズタにして鬱憤を晴らしていたところ、石火矢の練習中の田村に出会った。
え、なんで二体か?そりゃあ、立花と潮江に見立ててだな…、いやそんなことはどうでもいい。

なんとなく、田村に石火矢好きなの?と問うたらはい!と全力で返事をされた。
そのとき、私は彼に火器について教えてもらおうと胸に誓い、今に至るわけ。


「今度はどこですか?わかる範囲でお教えしますよ。」

「ありがとう。田村マジいい子。」

「いえ…。」


いい後輩を持てて先輩幸せ、とぎゅうぎゅう抱き締める。

爆笑したあいつらとは大違い。あ、思い出したらイラッとした。あとでぶん殴ろう。


「せっ、先輩、雅先輩!離してくれないとなにもできませんよ。」

「ごめんなさい。教えてください、田村先生。」

「せっ…!?やめてください、そんな…。」

「あれ、駄目だった?ま、いっか。あのね、ここなんだけど…。」

「あぁ、ここは…。」


はい、今なんで四年が六年の教科書の内容教えられるのか疑問に思った人。
安心してください、これ、四年の教科書だから。ちなみにこの間、三年の分は終わらせました。


「実際にやってみた方がわかりやすいですよ。ユリコ使います?」

「いいの?使う使う。ユリコちゃんよろしく。」

「では、ぼくがまず見本をみせますね。」

「はーい。あ、そうだ、田村。」

「なんですか。」


石火矢の準備を始めた田村の手に、小さな箱を強制的に握らせる。

頭に疑問符を浮かべ、よくわかっていない田村にハッピーバレンタイン、いつもありがとう、と告げた。


「いただきます。」


彼は驚いて目を見開いていたが、すぐにいつもの笑顔で笑うと、それを懐にしまう。


「じゃ、見ててくださいね。」


ドン、と音をたて飛び出した砲弾は、目標から六十度ほどずれた方向に弧を描いて飛距離を伸ばしていく。


「ねぇ、田村。盛大にズレたみたいだよ。あのへんに打つ予定だったんだよね。」


(たっ、たまたま不調だっただけですっ!)


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