加藤団蔵[1/1]
お、今日の一年は組の授業は馬術かぁ。 ん?馬術?
先輩らしくちらりと懐かしみ、格好よく通りすぎようとした。 …んだけど、プライドという名の理性が本能という名の本能に負けたので立ち止まってガン見することにした。 ていうか本能という名の本能ってただの本能じゃん。
「次ー、団蔵!」
「はーい。」
ひづめの音を鳴り響かせ、馬を走らせる。
は組からはひゅー団蔵かっこいー!若旦那素敵ーきゃー!なんてヤジが飛ぶ。 私も混ざろうかしら。
「きゃー!団蔵ー!若旦那素敵、マジかっこいい!」
あ、こけた。
「せ、せせせ、先輩!?なんでこんなとこに?」
「居ちゃいけない?」
「いえ、別にそういうわけじゃ…。」
馬から転げ落ちた団蔵を、土井先生がため息を吐きながら呼ぶ。
「お前、今日の馬術の実技点はゼロな。」
「……へ?」
「残念だったな団蔵!」
「とうとう馬術の成績も落ちたな。」
「あーあ、間抜け。」
は組めっちゃ笑顔。慰める気はないのか、今年の一年はシビアだな。
「なんだよ!仕方ないだろ、先輩が…、」
「人のせいにするんじゃない。」
団蔵に近付いてしゃがみこむとぺし、と頭を叩いてやった。 あう、と声を漏らしていたが私のせいじゃないし、まぁいいかなと思う。
「なにすんですかぁ。」
「実技ゼロ点って補習だよ?頑張ってー。」
「雅先輩がいきなり声掛けるからっ!」
「他の子だって声掛けてたじゃなーい。あ、私授業中だった。」
シナ先生に怒られる!どうしようバックレちゃおうかしら。 いやいやいや、サボり良くない。
「じゃあね、みんな!」
***
シナ先生にこってり絞られ、ようやく迎えた放課後。 あら、馬術の補習やってるわ。
「次、団蔵!」
「はぁい…。」
あれ、デジャブ?さっきもいい具合に団蔵が呼ばれたな。
あー、小説だからか。納得。
「団蔵!こけないでね?」
「へ、あ、うわ…っ!」
「うわ、団蔵またこけてやんの!」
「もうそれはウケねーよ。」
やっぱりは組辛辣。ウケ狙ってないよね確実に。
「雅先輩!なんなんですか、もう!」
「いや、なんなんですかはこっちの台詞よ。なんで私が声掛けるとこけるの。せっかく馬術のときのお詫び持ってきたのに。」
ぷんぷんと怒る団蔵に、いるでしょ?と袋をちらつかせる。 いりますけど!といやに力の入った声で、袋を受け取った彼は耳が赤かった。 ……なんか青春っぽい雰囲気が気恥ずかしくなったのでぶっ壊してみることにする。 前々から気になってたしちょうどいいかな、って。そしたら団蔵に空気読め、みたいな顔された。
「補習でも失敗したらどうなるの?また補習するの?」
(ほんと有り得ないですよね、責任取ってくださいよ?)
10/10
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