任暁左吉[1/1]



「左吉くん!」

「なんの用ですか、静かにしてください。」

「え、あ、ごめんなさい。」

「わかればいいんです。」


卒業してしまった先輩方、私の悩みを聞いてください。
後輩が冷たいんです。どんなに歩み寄っても冷たくされるんです。
もうやめて、私のライフはゼロよ。


「おい、左吉。先輩にそんなこと言って平気なのか?」

「雅先輩だから平気さ。」


………。私の先輩としての立場って…。

あ、今懐かしい先輩の声が聞こえた。
お前に先輩をするのは無理だ、って言われた。…気がする。

うっわ、先輩にまで見捨てられた。


「伝七くんは、いい子だね。」


作法だっけ、この子。あんなところにいるのによく心が荒まないな。


「ときに左吉くん。文次郎のことはどう思ってる?」

「尊敬してますけど。」

「じゃ、じゃあ三木ヱ門は?」

「頼りになります。」

「左門はどうよ?」

「まぁ、それなりに。」

「私のことは?」

「………。」


ふい、と目をそらされた。なにそれ傷付く。
え?先輩扱いされてないの?


「……先輩泣いちゃう!」


わああっ、と大袈裟に泣き真似をしてみても無視された。
むしろ伝七くんに慰められた。

ちょっとさ、左吉くんってば私にだけ辛辣じゃない?
なにこれツン?ツンデレのツンなの?
ならデレさせてやろうじゃないの!


「伝七くん、あーん。」

「え、え、えぇ!?」

「……っ!?」

「だーいじょうぶ、これしんべヱに貰ったやつだから。」

「そ、それなら…。」


ぱくり、と私が手に持っていたチョコを食べると、美味しいですと笑った。いやいや、伝七くんの笑顔のがおいし…、すみません自重します。

さて、と。じいいっとこっちを見てくる左吉くんを横目で見てにやりと笑う。


「あっれえ?左吉くんもやってほしいのかな?」

「な、な、ちが…い、ます。」

「ふぅーん。伝七くーん、もう一個いっとく?」

「え、いや、えっと…、さっ左吉にもあげてください!」


それじゃ、と部屋を飛び出して走り去ってしまった。


「ん!」

「しょうがないですね。」


遠慮がちに私の手からチョコをさらうと、ぷいと背を向けられてしまった。


「照れた?照れた?ねぇ照れた?」


(まさか、先輩相手になにを照れろというんです)


8/10

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