次屋三之助[1/1]



今日も今日とて三年ろ組の富松作兵衛の怒鳴り声が聞こえてくる。


拝啓 父上様、母上様

忍術学園は今日も平和です。いつも通りです。
私の部屋に三年ろ組の次屋三之助さえいなければ、いつも通りなのです。
とりあえず、こいつと同室の富松作兵衛に知らせに行こうと思います。

桜崎雅 敬具


さて、と。


「動くなよ、三之助。」

「えー。」

「動いたら立てなくなるまでしごいてやるから覚悟して動けよ。」

「絶対動きません。」

「よし。」


三之助の言葉を信じ、富松に彼が私の部屋にいることを伝えた。
神崎捕まえられるまで三之助は見とくから、あとでおいで、と言ったらすごく感謝された。苦労してんのな。


「もう少し富松を労ってやんなさい。…ちょっと、聞いてる?」

「きーてますよ。」

「目を見て聞け、目を見て。」


常識だろう、そのくらい。全く、富松は一体どんな教育してるんだ。
あぁ、そういえばあいつは別に三之助の保護者じゃなかったな。


「おいこら三之助。」

「なんすか?」

「なんすか?じゃない。人の部屋を漁るんじゃない。仮にも私は女子だぞ、わかってるのか。」

「いやぁ、甘そうな匂いがしたんで。」


少しばかり考えに耽っていただけでこれだ。
いっそ小平太にでも教育を…、駄目だ、あいつも常識をどこぞに置いてきたやつだ。
私は今、滝夜叉丸を心底尊敬した。今度会ったら優しくしてやろう。


「おま、それで許されると思ってんの?」

「雅先輩、優しいですから。」

「そんなおだてはいらん。」

「ちぇー…。あ、なにこれ。」


がさがさと一つの小さな袋を引っ張り出してきた三之助。


「あっ!?ちょ、おま、返せ!」

「んー?あ、チョコだ。雅先輩、これ食べていいですか?」

「ばっか、お前それは好きな人に、」

「あげるんですか?」

「…あげるんだ、って意気揚々とチョコを作ろうとする友達に感化されてつい作っちゃった代物だよ。」


私の言葉を遮り、口を開いた三之助。
それならさぞかし華もあったでしょうに、と内心呟きながら続きを口にする。


「雅先輩、先輩も年頃の女の子なんですから好きな人くらいつくったらどうですか?」

「悪かったな。色恋事に興味なくて。私だってつくれるもんならつくりたいよ。」


(大丈夫ですよ、すぐにおれのこと好きになりますから)


5/10

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