中在家長次[1/1]
「長次ー。」
「…、雅。」
「あ、いたいた。」
「…どうした。」
恋仲の中在家長次を捜して学園を徘徊してました桜崎雅です。
教室、部屋、競技地区にいなかったのなら図書室に来れば良かったものを…。 なんで私はあっちこっち行ってたんだろうか。 ていうか小平太に言われるまで気づかなかった私ってなんなんだろう。
案の定、長次は図書室にいましたよ。
「…雅?」
「え、なに?」
「難しい顔をしている。」
考え込んでいるからかしかめっ面でもしてたのだろう。
「考え事してた。」
口元をひきつらせて笑えば、無言で手招きをされる。
「なにか用か。」
「あぁ、うん。はろうぃんって知ってる?」
彼の横にすとんと座った。
ゆっくりと頭を撫でてくれる長次の大きな手。付き合い始めは子供扱いされてるようで嫌だったが、今はその逆だ。
「…あぁ。」
至極小さい声だったからつい聞き逃しそうになった。危ない危ない。
「さすが長次っ。私なんて作法の子たちに菓子たかられて知ったんだよ。」
「たかられた?」
「そうだよー。喜八郎の穴に落とされて、一年二人が可愛い顔してエグいカラクリ仕掛けてきて、仙蔵に炮烙火矢投げられて、藤内にはごめんなさいって見捨てられた…。しかも仙蔵の最後の台詞は"菓子をくれればやめてやる"だよ。」
もうこれ虐めだよね。あ、涙出てきた。 しかもはろうぃんの説明聞いたら子供が菓子ねだるんでしょ?
え、仙蔵お前…、え?お前私と同い年だよね?
「それで汚れているのか。」
「はい。思い出したら泣きたくなりました。」
その瞬間、目の前が暗くなり温もりを感じた。
「泣いても、いい。」
長次に抱き締められた。うわ、男前過ぎる。ていうかドキドキし過ぎて涙とか引っ込んじゃったよ。
「ねぇ、ちょーじ。とりっくおあとりーと、って言ったらなにかくれる?」
もう大丈夫、と伝え彼に腕を解いてもらった。
ふと、どんな反応をするの気になり唐突にはろうぃんの話題を振ってみた。 彼が菓子を常備しているなんて思わない。どうするんだろう。
ちなみに私はあのとき"ざけんなこのドSども!藤内大好きだそのまま優しい藤内でいてね!"って叫んで逃げたな。
「……雅。」
「んー?」
―ちゅっ
…………。……ちゅ?
「菓子なんて持ってない、から。嫌だったか…?」
あ、さっきのはリップ音か。接吻されたんだ私。 実感したら顔が熱くて仕方無い。しかも、これ地味に初めてだしね。
「めちゃくちゃ嬉しいです。」
惚れ直しました。はろうぃん万歳!
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