久々知兵助[1/1]
「勘ちゃんどうしよう。雅先輩が帰ってこない。」
「実習なんでしょ?それなら仕方ないよ。」
「でも約束したんだ。」
同室の兵助は恋仲の桜崎先輩のことになるとすごく心配性になる。
前に桜崎先輩が名前で呼んでくれていいのに、と言うのでそうしようとしたが兵助が雅先輩が浮気した、と豆腐に語りかけたため断念、なんてこともあった。
「兵助…、もう寝ようよ。昼に出てったのに夜に帰るのは厳しいって。」
「豆腐一緒に食べようって言ってた。」
「あぁもう、だから…!」
お前の大好きな先輩にお前のこと頼まれてるの。 なんか今日はどこぞの国ではろうぃんって行事があるって桜崎先輩に聞いた。 まぁ、なにをする行事かわかんないけど。
で、おれは先輩に取り敢えず帰りに豆腐買ってから帰るから遅くなったら兵助のこと寝かしといて、て言われてるの。 お願いだから寝て。
「先輩に無理させちゃ駄目だよ。」
とりあえず襖を凝視するな。
「……。」
「兵助…。」
はぁ、と深くため息をついた瞬間だった。 部屋の明かりを消していなかったからか、桜崎先輩が襖を開けて中に入ってきた。
「へ、兵助ごめんねっ。遅くなっちゃった。」
「先輩…!」
「尾浜も変なこと頼んじゃってごめん、大変だったでしょ。」
「あ、大丈夫です。」
先輩は少し離れたここからでもわかるくらい怪我をしていた。
きっと早く終わらせようと無茶をしたんだろう。 切り傷がたくさんあるし、装束も汚れてる。そのうえ、所々だが装束に血が染み込んでいる。 兵助、気付いてやれよ。見てて結構痛々しいんだけど。
「兵助、豆腐食べようか。ちゃんと買ってきたよ。」
「はい。」
尾浜もどう?と言われたので遠慮なくいただくことにした。 ちょっと兵助睨まないでよ。豆腐食べるだけなんだから。
「美味しい?」
「はいっ。」
「…。」
豆腐自体はは旨い。別に豆腐自体はは旨いからこの豆腐に罪はない。 でも真横のバカップルがこれでもかとピンクのオーラを出して幸せそうにするもんだから豆腐が不味く感じてきた。 ごめんよ豆腐。
「雅先輩、どうぞ。」
「ありがとー。」
なにこの疎外感。ここおれの部屋なのに、なんでおれの居場所がないの。
「ちょっと、イチャつくなら他所に行ってくれませんか。」
「えー、イチャついてないよ。」
「いつも通りだよ、勘ちゃん。」
この無自覚バカップルが…、あーもう爆発すればいいのに。
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