苦い不味い酸っぱい渋い甘い、そんな味。[1/1]



「うー…。」

「どうした喜八郎。」

「んー…。」


ごろごろと部屋を転がれば、同室の滝に心底迷惑そうにため息を吐かれた。


「あのね、滝。このへんがね、モヤモヤすんの。」


胸元を触りながら気持ちを告げた。そうしたら、首をかしげられた。


「なんだそれ。医務室行くか?」

「んーん。そーいうんじゃなくて。」

「違うのか?」

「うん。雅先輩っているでしょ?その人に会えないとその日はすっごーくつまんないんだ。」

「会えた日はどうなんだ。」

「嬉しいよ?それからね、ぼくの掘った穴に落ちてくれたら幸せなの。」


他にもなにかあるのか、と滝に問われあるよ、と返せばまた問われた。


「そうなのか?なにがあるんだ?」

「ぼくじゃない人と話すと苦しくて、ぼくじゃない人と出掛けてると痛い。」

「そうか。なら今から先輩に会いに行け。今日はまだ会っていないだろう?」


半ば強制的に部屋から放り出された。
先輩、先輩どこ?授業以外では余り走らない足で学園中を駆け回る。
競合地区のぼくの掘ったタコ壺がまばらにある場所に人影があった。


「雅先輩。」

「…喜八郎?」


見つけた。
思い切り先輩に体当たりすれば、よろけた先輩もろとも自分で掘った穴に落ちた。

今日は、幸せ。
昨日は、つまんなかった。
明日は、…なんだろう。


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