惚れろ!![1/1]
「文次郎っ!炮烙火矢の餌食になれ!」
「はぁ!?」
あぁ、苛々する。なぜ落ちないんだ。こんなにアピールしてるのに、なぜ振り向いてくれない? その腹いせに文次郎をいじめてやろうと思い、そこから取っ組み合いの喧嘩にまで発展した。 まぁ、留三郎の叫び声とともにそれは終わりを迎えたがな。
「いい加減にしろよ、誰が直すと思ってやがんだ。理由を言え、理由を。」
「雅がわたしを見ようとしないからむしゃくしゃしてやった。文次郎に対する罪悪感や、六年長屋を壊したことに対する後悔や反省はしていない。」
「てめぇ…っ!」
留三郎と文次郎の堪忍袋の緒が切れる瞬間、女の声が響いた。
「うるさい。あんたら、なにしてんのよ。」
「いや、仙蔵がよ、」
「どけっ、留三郎っ!!」
思い切り突き飛ばせば、うおっ!という留三郎の声が聞こえたがそんなもの知ったことか。
「雅、好いている。わたしは本気なんだ、お前のことを一等好いている。」
「冗談。勘弁してよ。じゃあね、私もう戻るわ。」
「…雅っ!」
なぜだ、なぜ惚れてくれない! わたしはこんなに雅に惚れているというのに。
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