命懸けの指きりげんまん[1/1]



夜、学園の門を出ようとする桜崎を見つけた。
後ろから声を掛ければあいつの肩がびくりと跳ねた。


「なんだ、潮江か。どうしたの、こんな時間に。」

「お前こそ、…忍務、か?」

「そう。」


こいつは強い。くノ一きっての成績優良者だ。たかがくのたまにやらせられるレベルの忍務で失敗なんてまずしないだろう。


「なんだ、怖いのか?いつもより口数が少ねぇじゃねぇか。」

「……この手の忍務は初めてだからね。緊張くらいするよ。」


なのに、なんでだろうな。
さっきの桜崎の背中を見たら声を掛けずにいられなかった。


「お前でも緊張するんだな。」

「しっつれいねー。」

「……死ぬなよ。」

「もちろん。」


緊張の解き方なんて知らねぇ。いつもみたいな憎まれ口を叩くのが、おれにできる精一杯だ。


「血塗れで帰ってきたら容赦しないからな。」

「やだ、潮江ってば怖ーい。」


そうおどけた桜崎は、俺の小指と自分の小指を絡ませた。


「なん…っ、」

「約束、しようか。」

「あぁ。」


俺の台詞と、桜崎の台詞が重なった。


「死ぬなよ。」「生きるわ。」


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