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ミニスカートで悩殺せよ!


「はーいじゃあミアちゃん、これ着ておいで」
「サッチきもい」
「真顔で言われると流石にキツいわ」



にやにやと目元口元顔の全部を緩ませながら、ミニのフレアスカートを渡してくるサッチに容赦なく感想を告げる。
てゆうかどこで手に入れたんだこのスカート。



「まぁ着るけどさー。罰ゲームだし。てゆうかこれ私じゃなくて皆が負けてたらちゃんと着てたの?」
「着るに決まってんだろ!」
「罰ゲームだしな!」
「まあいいから、お前はほら、早く着替えてこいよ!」



ぐいぐいと背を押されて着替えるために部屋を出る。
皆着るって言ってたけど、本当に着ていたのか疑問だ。どう見ても女子用のこのスカートは彼らのサイズに合うとは思えない。他のスカートが用意してあったとかなのかな。



「ま、いっか。どうせ負けたの私だし。」



あーあと投げやりに着ていたジーンズを脱ぎあまり身に付けないそれに身を通す。
元々着ていたロングキャミと合わせると露出度がかなり上がった気がする。しかも夏島の穏やかな海域にいる今は靴なんて履かない。履いているのはこの間ビスタに買ってもらった可愛らしい花が装飾されているミュールだ。万が一戦闘になっても、血の気の盛んな兄がわんさかいるから、正直自分の部屋に帰って履き替えるだけの時間は十分ある。

うーん、それにしても短いな。
あまり足を出した事はないから、余計に恥ずかしくなる。



「…てゆうか何でサイズぴったりなの?」



驚くくらいにぴったりとウエストに合ったそれは、まさに私のために用意されたもののようで不思議に思う。
どうせなら罰ゲームが終わったらこのスカート貰っちゃおうかな、なんて考えながら皆の待ってる部屋のドアを開けた。



「お兄ちゃんズおまたせー!」
「ぶふぉっ!」
「ぐあっ!
「ぐっじょぶ…!」
「きったな!ちょっと酒噴き出すのやめてよ!」



部屋にいた隊長達は私を見た瞬間若干頬を染める。
丁度酒を飲んでいたビスタが口から盛大に噴き出して、危うくかかるところだった。
てゆーか皆気持ち悪い!妹のスカート見ただけで頬染めるなんて!



「ちょ、ミア俺は許さな、…こら!何するんだサッチ!」
「まあまあまあまあ、こりゃあ罰ゲームだっての。保護者は黙ってなさい」



もごもごとサッチに押さえられた口の向こうで何かをわめいているビスタに若干引く。



「じゃーミアちゃん、残りの罰ゲームいってらっしゃーい」
「うーい、がんばりマス!」



微笑ましく見てくれる皆に海軍顔負けの敬礼をして、ついでにまだ何か言っているビスタを無視して部屋を出る。

探すのはエース。

今回の罰ゲームは、ミニスカートを着て被害者のエースに「エースのために着たんだよ」と笑顔で言う事。ちょろいわ!これのどこが罰ゲームなのか分かんないけど、今回のは思った以上に簡単だ。



エースのことだからきっと甲板で昼寝でもしてるかな、とキラキラと太陽が輝く甲板に出てみても、エースの姿は見つからない。仕方なく近くにいたクルーに聞いてみたら、見張り台に行ったという情報を貰った。



「んー。行くのめんどいな。」



見張り台まで遠回りしていくのが面倒くさい。
どうせなら近くまで外から登って声かけた方が楽かも。これをエースのために着たって言えば良いだけなんだから。

そうと決まればする事は早い。
甲板から見張り台の近くまで縄梯子がかかっているのを私は知っているのだ。
早速片足を縄梯子にかけ、一歩一歩ゆっくりと登っていく。風に吹かれてゆらゆらと動くから、バランスを取りにくい。
5メートルくらい登った所で下から声が聞こえたのに気付いた。



「おいミア!」
「あ、エース!」
「お前、何やってんだよ」
「何って、エース探してたんだけど…」



心なしか顔が赤いエースに首を傾けるけど、「……見えんぞ」とボソリと言われて理解した。
そんなこと、はなから分かってますよ。にひひと笑ってエースの言葉に答える。



「でも見えないでしょ。そのためのロングキャミですー。残念でした!」



スカートの中が見えるってエースは言ったけど、ギリで見えないのを私はちゃーんと知っている。
だってそのためにロングキャミを着てミニぎりぎりまで下げてスカート押さえてるんだもん。

ちょっと待ってて、とエースに声をかけて折角登った縄梯子をまた一歩一歩降りる。



「気をつけろよ」
「だいじょ、…わっ!」



下から声をかけてくれるエースに「大丈夫」と返事をしようとしたけど、急に下から吹いた風にキャミで押さえていたはずのスカートが捲れ上がる。まさか真下から風が来るとは思っていなかったから、予想外の事に一瞬頭が真っ白になる。



「おま、!ミアっ…!!」



だから、慌てて自分の手でスカートを押さえていた時には何もかも遅くて。既に私の体は宙に傾いていた。
ヤバいと思って目を瞑ったけど、次に襲って来た衝撃は冷たくて固い甲板ではなくて、少しだけ固いけど温かいエースの胸だった。そのまま、ふたりして雪崩れるように甲板へ崩れる。



「ごっ、ごめんエース!大丈夫!?」
「おまえなぁ〜〜」



私を抱きしめるように受け止めてくれたエースの胸から勢いよく自身を引き離し、けどその体には跨がったまま、顔を覗き込む。



「ごめんね、怪我しなかった?」
「怪我はしねぇけどよ、」
「よかった。それより、見た?」
「……………みてねぇ」
「目を逸らさないで言いなよ……」



ぷいと目を逸らして言うエースは明らかにウソをついている。見られたのかぁ…。
不可抗力でエースには何の非もないとはいえ、恥ずかしさから頬が少しだけ熱くなる。



ぺしりとエースの腹筋を叩いたら、首だけを上げてじとりと睨まれた。
エースの顔も心なしか少し赤い。でも何で睨むの?もう一度よくよく見るとエースが見ているのは私のスカート。
まさかまた捲れてるんじゃないかとひやりとして確認するけど、どうやら無事のようだ。
エースの腰に跨がって座った状態だから、スカートはその周りにふわりと可愛く着地している。丁度エースのおへそが隠れるくらい。



「……ミア、なんでんなもん着てんだよ、」



ぼそりと呟かれたその言葉にはっと罰ゲームを思い出し、これはチャンス!と目を輝かせる。
両手をエースのおなかの上に置き、少しだけ腰を浮かして身を乗り出す。エースの腹筋がぴくりと動いたけどそんなのおかまいなし!にっこりと今日一番の笑顔をエースに向けた。



「エースのために着たんだよっ!」
「はっ!?……っ、つか、ミア、おりろ、」
「あ、ごめん、重かった?ごめんね?」
「いや待て、ちょ、やっぱ動くな、」
「え?」



急に視線を彷徨わせ「いちマルコにマルコ…」とぶつぶつ呟き始めたエースははっきり言って意味不明だ。
頭にはてなマークを浮かべていると、前から声をかけられて顔を上げる。



「お前ら何やってんだい」
「あ、マルコ」
「うおあリアルマルコ!?」



私が上に乗ってるから、甲板に寝転んだ状態のままエースはマルコを見上げる。
マルコはそんなエースを見下ろして(見下して?)から、私を見て溜息をついた。なんだよ、失礼だな。バナナップルのくせに。



「ミア……お前いつの間にそんな体位覚えたんだよい…」
「ばっ!マルコおまえなに、」
「たいい?なにそれ」
「だから騎じょ、」
「のわあああああああああ!!!」
「わっ、何エース!??」



マルコの言葉にエースは急に焦ったように反応したけど私は意味が分からなかったから、マルコにそのまま聞き返す。そしたら今度は凄い勢いで起き上がってエースは私の耳を両手で塞いだ。正直エースの叫び声がうるさくてマルコが何を言ったかすらも聞こえていない。
それよりも、腹筋だけで起き上がって来たエースに感服だ。だがそれにしても、近い。エースが急に起き上がったから、腰に跨がって座ってた私の体とエースの体は必然的に密着する。



「なんだい。今度は対めn、」
「ダアアアアァァァァァルコォォォォォォォ!!!!!」



ダルコ?
またマルコが何かを言ったのが分かったけど、エースのダルコにかき消される。てかダルコって。新しいニックネームになりそうだな、とくふふと笑っていたら、エースに抱き上げられ隣に立たされる。何をするのかと思ったら、エースは私をその場に残し叫びながら甲板の先まで走り抜けて、船の淵に足をかけたと思ったらそのまま海に飛び込んだ。


私を含めた甲板にいた誰もがぎょっと目を見開く。



「…全く。若ぇよい。」
「マルコ冷静すぎ。」
「少し虐めすぎたよい」
「エースご乱心だね。どうしたんだろ」
「そっとしといてやれ」



冷静なマルコになんとなく私も冷静になる。
マルコはそれだけ言うと、甲板にいた2番隊に声をかけた。



「おーい。エースが落ちたぞ。誰か拾ってこい」



周りがぎゃーぎゃー騒いでいる中、一人だけ冷静に指示を出すマルコが逆に怖い。
やっぱダルコには逆らわない方がいい気がする。


うんうん、と頷いて、助けられたエースの見物にでも行こうとしたら、後ろから哀れんだ目のラクヨウに肩を叩かれ止められた。













(えーすたいちょーー!!あんたアホですかー!!?)
(げほっ!ぐへっ!(あいつはいもうといもうといもうと))
(エース、お前ホント可哀想だな)
(ザッヂ…げほっ、(いもうといもうと、))
(なんか、今日は、…お前の好きな肉たっぷりの飯にしてやるよ)
(ごほっ、…ザッチ…!!(いもうくにくにくにくにく))




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