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「………なにこれ」



朝起きたら大きなベッドに裸で寝てた。
となりにはいかつい猫さん。いや、猫科の人間。ヒト科の猫?どっちでもいいか。



「ルッチさん、どういうことか説明してください」
「お前は状況判断も出来ないのか」
「いや大体出来てますけど。昨日皆で飲んだときに酔っ払ってこういうことになってるんだろうとは思いますけど。記憶ないんで一応確認させてください」



私の隣で同じく裸のルッチは上半身を出して大きめふかふか枕に背を預けている。
隠れている下半身が服を着ているのか着ていないのか、大変重要な気がするけど、全く記憶にない昨夜から今朝までの事実確認の方が大事だ。ちなみに私はパンツすら履いていなかった。本気で終わってる。



「酒に酔ったお前を介抱してやっただけだ。感謝しろ」
「いやこれはさすがに介抱の域を超えている気がするんですが」
「ミアの希望を聞いてやった結果だ」
「酔っ払いの戯言ですよ。流してくださいよ」



恐れ多くもルッチさんとチョメチョメしてしまうなんて。
明日からどうやって生きていけばいいの。給仕のギャサリンに殺されちゃう。



「ルッチさん。このこと絶対誰にも言わないでくださいね」



今後の身の安全を確保するためベッドの中から顔だけを覗かせてお願いするけど、ルッチさんはそれに答えることもせず、口元を上げると枕をずらして体をベッドの中に滑り込ませた。頭を片手で支えたまま横向きに寝転んで私を見下ろすから、ルッチさんのガチガチの胸板が至近距離にうつって、ホント今更だけど恥ずかしくなる。



「本当に覚えていないのか?」
「……おぼえてません。昨日ふらふらで部屋に帰ろうとした事は覚えてるんですけど」
「そうか」
「あの、ルッチさん」
「なんだ」
「その、……本当に、その、私たち、してしまったんですか、?」
「なんだ、優しくしすぎたか?」
「いやそのあのまぁ、色々体に違和感はありますけど!念のためですよ!万が一って事があるじゃないですか」



くそう。乙女に何を言わせるんだルッチさんは。
確かに下着すら身につけてないし、だるいし、下半身がなんかあれだし、もーーーーーー!わかってるよ!でも!酔いすぎて体調が悪いとかそんな可能性もあるじゃない!


ルッチさんの胸板とか、にやって笑ってる顔とか、色々と状況的に恥ずかしくなってしまって、布団をすっぽりと被って目だけをひょこりと出す。
睨んでみるけど、ルッチさんに効くはずなどない。



「だから酒に呑まれるなとあれほど言っておいただろう」
「……あれは呑まれたらこうなるっていう警告だったんですか?」
「否定はしない」
「どうせなら、覚えてるときがよかったです」



終わった事はどうしようもないし、投げやりにそう言ってみると、ルッチさんは片眉をあげた。



「それは今ということか?」
「違います。昨日の事はホント覚えてないんで、なかった事にします」
「それで、どうするんだ」
「わかりません。けど、私、恋愛は順番通りがいいんですよね」



正直、ルッチさんに恋愛なんて言葉は似合わない。
私とルッチさんがそういう関係になるかも、ルッチさんがそれを望んでいるかも分からない。



「だから、ルッチさんも昨日の私は忘れてください」
「…ミアが望むならそうしよう」
「でももし、ルッチさんが忘れようとして、それでも忘れられなかったら、今度は飲んでない時に構ってくださいね。あ、でも順序はちゃんと守ってください」



へへと照れ笑いをして見上げると、ルッチさんは至極真面目な顔で「わかった」と返事をした。
無口で強くて恐れられていて、でも皆の憧れのルッチさんのそんな一面を見て、実はこの人恋愛下手なんじゃ、と思って笑ってしまった私は、この時点で既にルッチさんに惹かれ始めていることにはまだ気付いていなかった。













(そうと決まったら!服着ましょう!私の服どこですか?)
(ドアの横だ)
((遠っ!昨日何があったか知るのが怖い……!!))





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