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春風ノックアウト


「ねぇナミー。」
「なあに?」
「ルフィがかっこよすぎる」



春ののどかな気候の中、船はぷかぷかと次の島へ向けて進む。
甲板に出したパラソル。その影になっているテーブルで新聞を読むナミは「あっそ」とこちらも見ずに返事をした。



「もーどうしよう。ルフィがきらきらして見えるんだけど」
「本人にそういえば?」
「言えるわけないじゃーん」



尚も新聞を読みながら返事をするナミを恨めしく見ながら、私はその隣でさっきサンジくんが持ってきてくれた絶品ベリータルトををつつく。


好きなのかなぁ。
きっとそうなんだろうなぁ。
てゆーか好きなんてわかりきってるよなぁ。
何でよりによって、あの能天気バカなんだろう。


自分でも理由がわからないから、ため息が出る。



「ミアー!!」



急に船首の方からあの元気な声が聞こえてきて、どきんと胸が鳴った。
ほらもうこれ。絶対好きなんじゃん。名前呼ばれただけでどきどきしてるよ。



「呼ばれてるわよ」
「…しってる」



ルフィのあの笑った顔を見たら、どきどきが早くなってしまうのは確実。
どうしようかな、行きたいけど、行きたくないな。


そうこうしている間に、行動派の船長は文字通り私の元へ飛んできた。
予想通りに動きを早める私の心臓。



「ルフィが来たら、呼んだ意味ないじゃん」
「ミアが遅ぇからだろ。それより、なんかあったのか?」
「なんで?」
「ため息吐いてただろ」
「…地獄耳」
「ししし、すげぇだろ」



笑うなバカルフィ。
心臓が壊れる。



「どうでもいいけど、あんた達うるさいわよ」
「なんだよ、話してただけじゃねぇか。ナミはすぐ怒るなァ」
「ふふ、ナミこわーい」
「………。ルフィ、ミアが困ってるみたいだから助けてあげて」
「何だ?困ってんのか?」
「ルフィがかっこよすぎて困ってるんだって」
「うわわわわナミ!??」



隣で新聞をたたんだナミは意地悪な笑みを私に向けて、スタスタと船内へと入っていく。
あんのドロボー猫!覚えとけー!


赤くなった顔でルフィに向き直ると、じっと見つめる二つの瞳。
指の先まで脈を感じるくらいに、神経が研ぎ澄まされる。



「あ、あの、ルフィ、さっきの、冗談だから、ね?」
「なんだ。冗談か」



じっと私を見ていたルフィの眉が急に垂れて残念そうにそういう。
そんな顔されたら、切なくなっちゃうじゃない。



「冗談って言うか、その、」
「なんだ?」
「…病気なの」
「え!そうなのか!?チョッパー呼ぶか!?」



ルフィの焦った顔に、首を横に振って答える。



「チョッパーじゃ治せない病気だから」
「何の病気だ?」
「ルフィの顔見るたびに死に近づく病。」
「え!おれミアが死ぬのやだぞ!」
「でも治らないっぽい病気だからねー」
「いやでも待てよ。おれを見なきゃ死なねぇのか?」



腕組をして首を傾けながらはてなマークを浮かべるルフィにさえもきゅんとする。
私、終わってるなぁもう。



「おれやっぱやだ。」
「なにが?」
「ミアが死ぬのもいやだし、ミアを見れねぇのもいやだ!」



どーんと効果音が聞こえそうなくらい言い切ったルフィに、ふふと笑う。



「そもそもなんだその病気。ウソップみたいな病気しやがって。なんでおれの顔見ただけで死ぬんだよ。」
「あのね、人が一生のうちに打つ心拍数は決まってるんだって」
「だからなんだ??」
「だからさー、ルフィ見るとどきどきするから私の寿命が縮まっていってんの」
「なんだ。じゃーおれと一緒じゃねぇか」



しししといつものように笑って、ルフィは「問題ねぇ」と言った。
私はルフィの言ったことがまだ上手く理解できていなくて、混乱する頭でたずねる。



「それって…、ルフィも一緒って、どういう意味?」
「ん?…おれもミアを見るとどきどきしてるってことだ」
「…、つ、つまり、」
「ミアのは病気じゃねぇってこと。心配すんな」
「びょ、病気じゃないって、その意味、ルフィわかってる…?」
「おう」



もう一生分の働きをしてるんじゃないかというくらいに体が脈打つ。
風で飛びそうになった麦藁帽子を押さえて、ルフィは私の心臓を壊す笑顔を向けた。



「ちゃんとわかってるぞ。おれがミアを好きってことくらい」



ああもうほんと。
何でこんなバカを好きになっちゃたんだろう。











(ほ、ほんとのほんとにちゃんとしっかり意味わかってる!??)
(なんだよ?疑ってんのか?失礼なやつだな)
(だって、ルフィがわかってるとは到底思えない…!)
(じゃーミアはちゃんとわかってんのか?)
(えっ?)
(俺の言った意味)
(…うっ、(言えるかー!!))
(今更勘違いだったなんて言ったら怒るからな)
(勘違いだったらこんなにどきどきしないよ馬鹿っ)
(ししし、おれもだ)
((きゅん!))







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