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おまけ




「お、髪大丈夫だったのか?」
「…こげてた」
「ぶっ」
「笑い事じゃないでしょー。乙女には大問題だよ」




お水を貰いに食堂に来たら、サッチがまだキッチンにいた。



「まだ何か作ってるの?」
「おう」



甘い匂いが漂うここはまるでお菓子の国。
半乾きの髪を緩くまとめながら、サッチのいるキッチンへと入る。
隣に並んでサッチを見上げると、綺麗に焼き上がったスポンジの真ん中を切りながら「ん?」と聞いてくる。



「サッチおにーちゃん」
「…なによ」
「トリックオアトリート!」



いひひと笑いながら手を差し出して見上げる。



「…可愛い妹にはイチゴのショートケーキまるまる一個あげるから、ちょっと待ちなさい」
「えっ!ショートケーキ作ってるの?」
「おう。あとはイチゴ中に入れてクリーム乗っけて上にイチゴでデコレーションして終わり」
「楽しみー!サッチの手は魔法の手だね!」
「手伝ってみる?」
「いいの?」



サッチの提案に、目を輝かせる。
手を洗っている間に、間のクリームとイチゴはサッチが綺麗にやってしまったから、私は周りのデコレーション。
クリームを塗るのは本当に大変だ。まっすぐ平になってくれない。
サッチの作るそれと比べるとかなり不格好になってしまうけど、サッチは気にしないのか、全く口を出してこない。サッチ曰く、楽しく作れりゃそれでいい、らしい。


使った物をシンクで洗い始めたサッチを横目に、私はクリームを塗っていく。気分はパティシエ。最後に均等にイチゴを乗せて出来上がりだ。



「お、いいじゃん」



最後のイチゴを乗せ終えた所でサッチに声をかけられる。
サッチもお皿を洗い終わった所らしい。

でしょ!?と達成感に溢れる笑顔でサッチの方を見ると、一瞬間を置いて目を細めて笑い出す。



「??」
「ックク、ああ、いい出来だぜ」
「何?なんで笑うの?」
「いや。そういや、俺には?」
「サッチになに?」
「トリックオアトリート。」
「え!こ、これはサッチが私にくれたケーキだよ…?」



まさかサッチに言われるとは思わなくて、食いしん坊な私はケーキの乗っているお皿を私の方に引き寄せる。
すると、また面白そうに笑ったサッチ。



「じゃあ、これ貰っとくわ」
「!」



サッチの顔が近付いて来たと思ったら、ぺろりと舐められたのは鼻の頭。「クリームついてたぞ」とにっと口の端をあげる。



甘いにおいに甘い空間。
調子が狂ってしまった私の頬はほんのり赤い。



「……へんたいサッチ…」




サッチのくせに、トリックもトリートも、どっちも持っていくなんて。





(憎まれ口しか叩けない私は、きっとまだ子供だ、。)






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