おまけ
![](//img.mobilerz.net/sozai/1641.gif)
「お、髪大丈夫だったのか?」
「…こげてた」
「ぶっ」
「笑い事じゃないでしょー。乙女には大問題だよ」
お水を貰いに食堂に来たら、サッチがまだキッチンにいた。
「まだ何か作ってるの?」
「おう」
甘い匂いが漂うここはまるでお菓子の国。
半乾きの髪を緩くまとめながら、サッチのいるキッチンへと入る。
隣に並んでサッチを見上げると、綺麗に焼き上がったスポンジの真ん中を切りながら「ん?」と聞いてくる。
「サッチおにーちゃん」
「…なによ」
「トリックオアトリート!」
いひひと笑いながら手を差し出して見上げる。
「…可愛い妹にはイチゴのショートケーキまるまる一個あげるから、ちょっと待ちなさい」
「えっ!ショートケーキ作ってるの?」
「おう。あとはイチゴ中に入れてクリーム乗っけて上にイチゴでデコレーションして終わり」
「楽しみー!サッチの手は魔法の手だね!」
「手伝ってみる?」
「いいの?」
サッチの提案に、目を輝かせる。
手を洗っている間に、間のクリームとイチゴはサッチが綺麗にやってしまったから、私は周りのデコレーション。
クリームを塗るのは本当に大変だ。まっすぐ平になってくれない。
サッチの作るそれと比べるとかなり不格好になってしまうけど、サッチは気にしないのか、全く口を出してこない。サッチ曰く、楽しく作れりゃそれでいい、らしい。
使った物をシンクで洗い始めたサッチを横目に、私はクリームを塗っていく。気分はパティシエ。最後に均等にイチゴを乗せて出来上がりだ。
「お、いいじゃん」
最後のイチゴを乗せ終えた所でサッチに声をかけられる。
サッチもお皿を洗い終わった所らしい。
でしょ!?と達成感に溢れる笑顔でサッチの方を見ると、一瞬間を置いて目を細めて笑い出す。
「??」
「ックク、ああ、いい出来だぜ」
「何?なんで笑うの?」
「いや。そういや、俺には?」
「サッチになに?」
「トリックオアトリート。」
「え!こ、これはサッチが私にくれたケーキだよ…?」
まさかサッチに言われるとは思わなくて、食いしん坊な私はケーキの乗っているお皿を私の方に引き寄せる。
すると、また面白そうに笑ったサッチ。
「じゃあ、これ貰っとくわ」
「!」
サッチの顔が近付いて来たと思ったら、ぺろりと舐められたのは鼻の頭。「クリームついてたぞ」とにっと口の端をあげる。
甘いにおいに甘い空間。
調子が狂ってしまった私の頬はほんのり赤い。
「……へんたいサッチ…」
サッチのくせに、トリックもトリートも、どっちも持っていくなんて。
(憎まれ口しか叩けない私は、きっとまだ子供だ、。)
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