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ハロウィンゲーム




「サッチー!トリックオアトリーートーーー!??」
「ロリ系妹!」
「おっ、おにいたん!お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうゾ☆」
「ぶわっはっはっは!!ケッサク!!」



ウインクまでして可愛さアピールしたのに、普通に傷つくわ。
机をばんばんと叩いて目の前で爆笑するサッチに拳が震える。
でも、我慢だ。お菓子を貰えなきゃ、別の兄貴に悪戯される!
私はロリ系妹!クソ兄貴が大好きなロリ系妹!



「おにいたんの美味しいお菓子、ないとミアが意地悪されちゃう…」
「合格!」
「っしゃ!」



ちょっと涙目で見上げたらサッチはころりと落ちた。
私に小さな包みを投げながら「マルコ対策リキュール入り甘さ控えめチョコだ」と言う。よし、マルコ攻略!しっかりとそれをキャッチして「ありがとうおにーたん」と言いながら食堂を駆け出る。





今日の罰ゲームはひと味違う。ハロウィンのみの特別ルールだ。
被害者はサッチ。罰ゲームは私。連続で負けるなんて私も運がない。だって今回は全員参加型なのだ。

各隊長達に手紙が届けられたのは今朝。今日一日、それぞれ30分だけ時間が割り振られている。そのそれぞれ決められた30分の間に私を捜して見つけられたら「トリックオアトリート」。私がお菓子をあげられたらセーフ。あげられなかったら、その場で悪戯。

ちなみに、お菓子を用意出来るのは被害者のサッチのみだ。他から手に入れたお菓子は受付不可。最初にサッチに協力しようって頼んでみたけど、絶対アイツこの間のこと根に持ってる…!
さっきの会話でも分かる通り、出したお題にサッチが満足したら、お菓子を貰える事になっている。


そして私は現在船内を走り回っている。
お菓子を手に入れたのに今なんで逃げているかって?だってそれは!隊長から逃げ切ったら貰ったお菓子は私の物になるから!
サッチのお菓子は絶対美味しい。たったひとつしかないそれが手に入るなら隊長からだって逃げてみせる!いまだ成功した事はないけど!



「ミアみっけ」
「ぎゃ!!」



真後ろから耳元で声をかけられ、飛び上がる。
こんのあほまるこーーー!!見つかった!!



「トリックオアトリート」



ニィと口元を上げながら私に手を差し出してくる。



「マルコ反則―!!」
「なにが」
「存在!」
「ひでぇ妹を持ったよい」
「まだ食堂出てから3分なんですけど!?待ち伏せ禁止だよ!?」
「してねぇよい」
「じゃあなんでこんな早く見つかるの!?」
「言ったろい。ミアは分かり易いんだよい」
「う〜〜〜」



しぶしぶと手に持った包みをマルコに差し出す。だって、マルコの悪戯とか考えるだけで質が悪い。
ぶすっとした表情でマルコを睨み上げながら「トリートどうぞー」と言うと、マルコは笑いながら礼を言った。

包みを開けて中のチョコレートを出す。
一粒しかないからこそ、より貴重で美味しく見える。
ああああ。いいなぁ。



「物欲しそうな顔だねい」
「それはマルコよりも私の胃の中に入りたがってる気がする」
「気のせいだよい」
「ケチマルコ」
「半分食うかい」
「まっじで!」



ほら、と小さな一粒を半分口に含み、残りを私の方へと突き出す。ポッキーゲームの時のを思い出して、「するか馬鹿!」とマルコにお腹に拳を入れる。そんな攻撃全く効いてないマルコは笑いながらそのままぺろりと全部を口の中に入れた。



「ごちそうさん」
「むっかつくー!」



ぽんぽん、と頭を撫でられたのも更にムカつく。
ちくしょー次だ次!
ぷんとマルコに背を向け、次のお菓子を貰いにサッチのいる食堂へ向かう。


あとは、ビスタとエースを残すのみだ。



「サッチただいまー」
「おー。おかえり。早かったのな、ってことは取られたのか」
「うん。取られた…。しかも目の前で食べられた。マルコちょー性格悪い」
「だってアレ、マルコのお気に入りだもんよ」
「そうなの?じゃあ尚更食べてみたかったなー」
「ミアにはまだ早ぇけどな。」
「何で?」
「中に入ってる酒が強いから」
「えー。大丈夫だよ」



みんなして私を子供扱いして。
食堂のテーブルに頭を預けながら行儀悪くサッチと喋る。次の罰ゲームまで後少し。
でも次はビスタだから、なんとかなるかな。


すくっと席を立ち、気合いを入れてサッチを見る。



「よし!じゃあサッチ、いくよ!?」
「おう」
「トリックオアトリート!!」
「海軍元帥!!」
「は!?え!?」
「…3」
「え、え!??」
「2」
「センゴク?センゴクだよね!?」
「いー…」
「め、め、メェ〜〜??」
「ぶっ!!」



センゴクのものまねとか全然思いつかなくて、でもサッチがカウントダウンを始めたから、焦って頭に浮かんだいつもセンゴクの隣にいるヤギの真似をしてしまった。



「あ!今笑った!サッチ笑った!!」
「いや、ちょ、おま、それはセンゴクじゃねぇだろ」
「でもサッチ笑ったから合格でしょ!?」
「つーか紙食ってんじゃねぇよ」



未だお腹を抱えているサッチは、その辺にあった紙をむしゃむしゃしている私の口から紙を奪い取る。体張ってんだよ。合格でいいじゃん!



「ねーお菓子ー」
「あー。面白かった。ヤギとか、予想出来るかよ」
「だってセンゴクってどんなだっけ?カモメ頭の上に乗せてるよね」



サッチの頭くらい変だよねー、と口に出そうとしたら、ほい、と次のお菓子を私に手渡してくれる。
あっぶねー!良かった口にしてなくて!



「ありがとうサッチ!」
「おう。」
「今度のお菓子は何?」
「シフォンケーキ」
「うひゃあああああ…!!」
「食いたきゃ頑張って逃げ切れよ」
「超任せて!」



サッチのシフォンケーキとか!絶対口の中でとけるよ!!
うひひひひと顔いっぱいで笑いながら食堂を出る。
ビスタの事だから、もしかしたらハロウィン自体参加しないかもしれない。


とりあえず、ビスタの行かなそうな所を頭に浮かべながら船内を歩く。



「あれ?」



てくてくと歩いていると、前方に何か小さい物が落ちている。
近付いて確認すると、私の好きな一口チョコ!しかも大好きなミルクチョコ!
だ、誰が落としたんだろう…。
周りをきょろきょろ見るけど、誰も見当たらなくて、自然と口元が緩む。

いいかな、もらっちゃって。
いいよね、誰もいないんだし!



「いひひ、ラッキー!」



小さな戦利品をポケットに入れて数歩歩くとまた何か落ちてる。
ハッとしてさっきよりも数倍速くそこへ行くと、落ちているのは先程の物とは別の味。



「うわ凄いラッキー!イチゴミルクー!」



キラキラとした目でそれを拾い上げ、すかさずポッケへ。
2度ある事は3度ある。
きょろきょろと辺りを見渡してみると、あった!
今度はアーモンドチョコ!
あ!あっちにも!うっひー!ホワイトチョコにクランチチョコ!!


誰が落としたんだろう。ポケットに穴でも開いてたんじゃないかな。
落とした人には悪いけど、私は海賊ですから!ありがたくお宝頂いていくぜー!

にししと笑いながら片手で持ちきれないくらいの戦利品を見て幸せ気分いっぱいになる。

だから、今自分がどんな状況にいるかなんて、すっかり忘れていた。



「………落ちてる食べ物は拾うなと、教えなかったか?」
「ぎゃーーー!!!」



横からビスタの声が聞こえて、手に持っていたチョコをバラバラに落としてしまう。
開け放たれたドアに身を預けて部屋の中から声をかけてきたビスタに、忍者か!と思ったけど、よく見たらここはビスタの部屋の前だった。



「トリックオアトリート」
「や、やられた……」



紳士的に微笑みながら言ったビスタは本当に似非にしか見えない。



「ビスタ策士すぎるよ」
「いくら何でも本当に拾うとは思わなかったけどな」
「ぐ……」



返す言葉もございません。
でもチョコはしっかり頂きます。



「で?菓子か?悪戯か?」
「うー…。ビスタのお菓子シフォンケーキなんだよー」
「美味そうだな」
「でしょー。だから私も食べたいなーなんて」
「じゃあ悪戯にするか?」
「え。ビスタ意地悪」
「はは、冗談だ。中に入れ。お茶にしよう」
「やったー!だからビスタ好きー!!」






本当にビスタはよく出来た兄だ。
手の平で転がされたって許してしまうくらいに。
サッチの口溶けシフォンケーキを半分貰って、美味しい紅茶と一息。
そしてポケットにはたくさんの一口チョコをつめて、今はるんるん気分で食堂へと向かっている。



「さぁっちー!」
「お、機嫌いいな」
「シフォンケーキちょー美味しかった!!」
「なんだ?じゃあ悪戯されたのか?」
「ううん!ビスタが分けてくれたの」
「なんだそりゃ。アイツもお前には甘ぇなぁ」
「ふっふっふー、可愛い妹ですからねー」



にひひとピースサインをする。



「あとはエースか?」
「そう。やっと最後の一人だよ」
「じゃあ、やるか?」
「うん!いくよ?」
「おう」
「サッチ!トリックオアトリート!!」
「俺!」
「え、サッチ!?」
「そう俺!」
「えーっと、えーっと、…………俺のリーゼントは世界一だ、ぜ☆」
「いやそれはないわ。つーかミアきもい」
「え、真顔で否定!?」



決めポーズまでしてやったのに何が不満なの!?
尚も残念そうな顔で「ねぇわー」とか言ってるサッチ。酷い!!



「ってか不合格!?」
「不合格」
「なんで!?」
「きもい。俺はもっとかっこいいぜー?」
「いやこんなもんだよサッチなんて」
「不合格確定」
「あ!」
「んじゃま、頑張りたまえ」



最後の最後で不合格になってしまった。
意地悪に笑うサッチは悪魔だ。



「なに?逃げねぇの?」
「うん。よく考えたらさー、ここから出るから見つかるんだよね」
「ここにいても見つかるんじゃねぇ?」
「いや、裏をかくの!だって皆私が逃げてると思ってるでしょ?だからここにいたら30分くらいしのげると思うんだよねー」
「そうかぁ〜?」
「そうそう」
「おーサッチ。腹減ったー。何かくれ。あ、あとミア知らね?…あ」
「あ」
「ほーらな」



ぽかんと口を開けたままの私とエースににやりと笑うサッチ。
一瞬間をあけて、エースもにやりと笑った。



「ミアみーっけ」
「み、見つかっちゃったー」



棒読みの私に、にこにことしながら歩み寄る。
やっばいどうしよう。サッチからお菓子貰ってない。素直に逃げとけば良かった。



「トリックオーアトリィートッ!」



まぶしい笑顔で両手出されても、困るよエース!!
明らかに何か期待しているのが分かるよ!!



「あの、じゃ、……トリックで」
「はあああ?ねぇの?菓子?」
「ごめんエース!!私頑張ったんだけどサッチがくれなかったの!」
「えー。じゃあ悪戯な。」



んー、と腕を組んで考えるエースをドキドキと待つ。
隣で肘をついて傍観しているサッチはにやにや顔。
あ!と閃いた顔をしたエースはこちらを見てそれはもう嫌になるくらいにまにまと口の端を釣り上げた。



「な、なに…?」
「髪、触らして!」



予想外の言葉に目を丸くする。
髪くらい、いくらでも触っていい。そんな悪戯ですむなら、と二つ返事で了承した。



のが間違いだった。



前髪を後ろに持って来て編み込んだと思えば途中からぐちゃぐちゃにかき回す。
落ち着いた私の自慢の髪が、山姥の如く変化を遂げていく。
マジで、心配になってくる。何がって、エースのヤツ自分の手を熱くして私の髪をチリチリにしていくからだ。



「あ、あの、エースさん?」
「もーすぐだから!」
「あんまり髪傷めないでね…?」
「まかせとけって!」



任せとけないから頼んでんでしょー!
とはらはらする事数分。「出来た!」という声とともに、エースの爆笑が響く。



「やっべぇ俺天才!」
「ちょ、どんな髪型なの?」
「いや、なんつーか。俺の知り合いの髪型。あの髪型どうなってんだろうってずっと思ってたんだけどよ、意外と出来るもんなんだなー」
「知り合い?誰?」
「ダダンっつー山賊。」
「いや誰それ。山賊?」
「おう、つか、ぶっ、まじ、ぶはっ!」



エースじゃ話にならないから、サッチに助けを求めようと振り返ると、あの馬鹿兄貴、床にしゃがみ込んで頭抱えて震えてやがった…。
仕方ないので、立ってキッチンの窓に映る自分を確かめにいく。そして後悔。驚愕。



「なにこれ…!!」
「ぶっふ、い、イタズラだろ、」
「…え!?え!?何この髪型!?」



ふるふると震えながら、あまりのありえなさに泣きそうになる。



「もう!エースの馬鹿ぁぁ!」



バシッとエースの脇腹にキックを入れ、オレンジのテンガロンを奪い食堂を出て行く。
向かうはバスルーム!この恥ずかしすぎる頭をオレンジで隠して、バスルームに駆け込む。速攻で服を脱ぐと浴室に入って頭からお湯をかぶった。










(ちくしょー!エースのヤツ!覚えてなさいよー!!)
(あぁっ!髪こげてる!?)






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