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海色の星






エースと付き合い始めて今日で1年。
別に、記念日とか騒ぎ立てる性格もしていないので、何も準備はしていない。
多分エースも覚えていないと思うし、これからもずっと一緒にいるつもりだから別に1年にこだわらなくてもいいと思っている。



「あ、エース!マルコ隊長が探してたよ」



お茶でも飲もうと食堂へ足を伸ばすと、丁度エースが食堂から出て来るところだったので、自隊長のマルコがエースの名を呼び怒り狂っていたのを思い出しそれを伝える。



「マルコが?」



頭にはてなマークを浮かべているのが見える。



「ふふ、うん。エースまた書類の提出忘れてたでしょ」
「あ」



やべぇ、とエースは頭をガリガリと掻いた。



「終わりそうにないの?」
「いや、あと少しで終わると思う」
「手伝う?」
「あー、いやいい。そのかわり、今日晩飯終わったら俺の部屋来て」
「? わかった」



絶対だぞ、と念を押して、自室へとエースは戻っていった。
基本的に夜はエースの部屋か私の部屋で一緒に寝ているので、今更なにを言うのだろうかと、不思議に思いながら、エースが見えなくなったところで私は食堂へと足を進めた。













「コンコン、エースいる?」
「おー」



ドアをあけ、勝手知った部屋へと入る。
多分、このままここで寝ると思うから、お風呂を済ませ寝る準備をしてきた。
ベッドに寝そべっていたエースは私を見ると体を起こし、ちょいちょいと指を動かして私を近くへ呼ぶ。
その仕草が可愛くて、自然と笑みがこぼれた。



「どうしたの?」



エースを頭からぎゅっと抱きしめながら聞く。
ベッドに座っているエースの頭は私の胸くらいの位置にあって。
直接言った事はないけど、実は私はエースを頭から抱きしめるのが結構好きだったりする。



「別にどうってことはないんだけどさ」



ゆるゆると私を抱きしめ返すエースは先を続ける。



「今日、俺たち付き合って1年だろ?」



まさかエースが覚えているとは思わなくって、ビックリしてエースの顔を見る。



「え、まさか忘れてたのか?」
「ううん、忘れてはいなかったけど、エースが覚えてるとは思わなくって」
「なんだそれひどくねぇ?」



ちょっと不満そうに私を見上げる。
でも私はエースが今日の日の事を覚えていてくれたことが思った以上に嬉しかったようで、隠す事なく頬を緩めた。
記念日なんて、気にするタイプではなかったのに、私も意外と女の子ぽい所があったらしい。



「覚えていてくれて嬉しい」
「…」



素直に気持ちを伝えると、エースも照れたように頬をかく。



「それでよ、その、」
「?」



もぞもぞとポケットの中を探るエースを不思議に見ながら先を待つ。
すると、ポケットから拳をだして私に方へと突き出すので、反射的に自分の手を出す。
しゃらりと私の手の中に星がこぼれ落ちた。



「!」
「その、記念に、プレゼントだ…」



顔を赤くし、視線をそらしながら言うエースと、手の中のものを交互に何度も見る。
透き通るような、海と同じ色の星が先についているネックレス。
嬉しさが勝って、言葉を紡げない私を不安そうにエースは見上げた。



「気にいらなかったか…?」



ぶんぶんと首を振り否定を表す。



「す、すごいうれしい!!」



ほっとしたのか、やっと笑顔を見せたエースに、今度は私の方が気まずくなる。
こんな事なら何か準備しとけばよかった!



「エース、本当にありがとう。すごく嬉しい」
「おう」
「けど、…」
「?」
「ごめん、私エースが覚えてるとは思ってなくて、何も用意してないの…」



しゅんと項垂れると、なんだそんな事かと、ニカリと笑ってエースは私を抱きしめた。



「別にいーよ」
「でも、」
「じゃあ今日はずっと一緒にいて。」
「…いつも一緒にいるじゃん」
「いつも以上に、離さねーから」
「!」




射抜くような目で私を見つめ、エースは強引に私の唇を奪った。







(来年は、きっとなにかサプライズを、しよう)






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