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特急アホウドリ




「あれ?特急アホウドリじゃねぇ?」



甲板でくつろいでいたクルーが空を指す。
ここ数日そわそわとこの配達を待っていたのだ。



「それ私の荷物ー!!」



甲板に出るなり元気に声を出して、船に足をつけたアホウドリに駆け寄る。



「なんだ、ミアさんの荷物だったんですね」
「何買ったんすか?」
「えっへへ、秘密!」



話しかけて来たクルーににっこりと笑って返し、アホウドリから配達された大きめの袋を受け取って「おつかれさまです」と声をかける。



「はい、じゃあこれ、250万ベリーね」
「250万ベリー!?そんな大金、ミアさん何買ってんすか?」
「秘密だってばー」



いちいち突っ掛かってくるクルーを適当にあしらい、250万ベリー耳揃えて渡すと困った顔をするアホウドリ。



「どうしたの?250万ベリーだったわよね?」



首を傾けて聞くと、大きな身体に斜めにかけられていたバッグから一枚の紙を取り出す。
よく見るとそれは請求書で、そこには255万ベリーと記載があった。



「255万ベリー!?え、なにそれ!…超特急料金!?5万も取るの!?」



どうしよう!確かに「超特急で!」って注文してしまったかもしれない。
でももうお金がない。やばい、どうしよう。誰か……



「お前さん、こんなに何買ってんだい?」
「イ、イゾウさん!!」



どうしよう、と唸っていると、後ろからゆったりとした足取りでイゾウさんが歩いて来て隣に並んだ。
かと思ったら懐から紙幣を何枚か出して、目の前で困った顔をしているアホウドリに手渡す。
アホウドリはそれを受け取り満足そうな顔で一鳴きすると、空へと飛び立っていった。

あまりにも自然な流れに、反応が少し遅れてしまう。



「イ、イゾウさん…!」
「でっけぇ荷物だな」
「ごめんなさい!返します!今度絶対返しますから!」
「こんくらいどうってことねェよ」
「でも、これは絶対返します。5万ベリー。今全財産使ったんで、今度お金入ったら!」
「…いいっつってんのによ」



ここだけは絶対譲らないというように見つめると、イゾウさんは諦めたように眉を下げて笑った。



「で?なんなんだい、それは」
「あッ!これは、内緒!今度見せますから!ごめん、部屋帰ります!!」



立て替えてもらったお礼もそこそこに甲板を後にする。
折角、内緒で頑張って驚かせようと思ったのに、ここでイゾウさんにバレては全部が水の泡だ。


危なかった。


ふう、と自室のドアを閉めて安堵の息を吐く。
両手に大事に握りしめているのは、丁寧に包装されているワノ国からのお届けもの。


ドキドキとしながら、包みを開けていく。
開封した瞬間、わあ、と感嘆の息が漏れた。

春を思わせるような淡い桜色、私たちを包む深い海のようなブルー、見るだけでわくわくしてくるそれに顔が綻ぶ。
一式にしたらかなり高額になってしまったけど、着物3着と浴衣2着。それと着付けの本。



「いい買い物した!早速着てみよっと」



鼻歌まじりに着付けの本を開いて、肌触りの良い綺麗な布の一枚を手に取った。








(………なんでこんなに難しいの……(ガクーン))
(浴衣はなんとか着れたけど、着物は散々ね…)
(道のりは長そうだわ)






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