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ひとつのベッドで一晩過ごせ!



こんこん、と少し控えめなノックが聞こえる。
もう夜も遅いし、誰だろう、とドアを開けると、目の前にいたのは寝間着に枕を持ったミア。



「こんな時間にどうしたの?」
「ハルタぁー。ごめんねこんな遅くに」
「いいケド。まあ、入りなよ?」
「うん」



大きめの枕をぎゅっと抱きしめ部屋に入る。
パタンと静かにドアを閉め、改めてミアに向き直った。



「なんかあった?」



末の妹がこんな夜中に訪ねてくるなんて珍しい。
ふるふると首を振るミアに首を傾げる。



「ごめんねハルタ。私ゲームで負けちゃって…」
「なに?罰ゲーム?」
「うん…」



そういえばサッチとマルコが馬鹿な事をやっていた気がする。
仕組まれたこととは知らずに素直に罰を受けるミアには少しだけ同情だ。かといって、助ける程僕はいいヤツでもないけど。現に僕も罰ゲームくじに書いていれたからね。
通常の罰ゲームであれば他の奴らが周りを囲んでうるさく騒ぐけど、この罰ゲームになった場合は別らしい。内容にもよるらしいけど。



「で?なんの罰ゲームなの?」
「うん。ハルタと一緒に一晩寝る事」
「………」



誰だこの罰ゲームを入れたヤツは。
仮にも、妹だよ?



「やっぱ、迷惑だよねー。ごめんねハルタ」



しゅんと眉を下げて息を吐くミアを見る。
ここまでしゅんとしてるのは、きっと前回僕に罰ゲームをした時に、もう酷い事はしないと約束させたからだろう。
ま、一緒に寝るくらいで僕は怒ったりはしないけど。



「迷惑なんて言ってないでしょ」
「じゃあいいの!?」
「しーずーかーに。夜だよ」



ぱっと顔を明るくしたミアに声が大きいと注意する。小声で「ごめんなさい」と謝るミアは可愛い妹だ。



「寝る準備バッチリだね」
「うん。実はもうかなり眠いんだぁ」



ミアはふあ、と欠伸をして目尻に涙をためる。



「お子様はもう寝る時間だからね」
「む、お子様じゃないよー」
「はいはい。じゃあ寝ようか」
「え、ハルタそのまま寝るの?」
「そうだけど、」
「ええー。服、着てよ…」



少し赤くなった頬をむうと膨らませながら僕を睨む。
そんな僕は、ミアが来る前に風呂から上がった時のまま。ラフなパンツに上半身はそのまま。いわばエースと同じだ。違うのは肩にタオルをかけていることくらいかな。



「なに。意識してんの?」
「ばっ!ハルタに!?まさか!」



意地悪ににやっと口角をあげると、ミアは先程と比べ物にならないくらい赤くなる。
この間、ミアが処女だと自爆したのはどうやら本当みたいだ。



「安心してよ。ミアに何かする程僕も困ってないから」
「ううーん、それも何か複雑」



腕を組んで唸るミアが可笑しくて少しだけ声を出して笑った。



「じゃあ言い換えるよ。妹に何かする程、僕は落ちてはいないよ」



きょとんとして僕を見上げるミアに、少しだけ悪戯心が疼いた。
ミアの目にかかりそうな前髪を指で払いのけ、少し屈んで耳元で囁く。



「それとも、妹じゃなくて僕の女になりたかったの?」



一瞬の後、「ちがうよ馬鹿ーーー!!」というミアの盛大な声が響く。同時に枕を投げつけられたけど、ぎりぎりで避けた。さすが僕。



「はいはい、僕もミアのことは大事な妹としてしか思っていないから。早く寝るよ」



これ以上ミアに騒がれてはたまらない。
壁にぶつかってぽとりと落ちたミアの枕を手に取り、はいと渡す。



「電気消すから、早くベッド入りな」
「うーーーー」
「唸らないの。可愛い顔が台無しだよ」
「はーい」



口では僕に勝てないと悟ったのか、素直に返事をしてベッドに入る。
枕の位置を整えて、僕のベッドの半分を占領した。



「消すよ?」
「うん」



パチン、と電気を消すと、暗闇が部屋を支配する。
慣れた距離をベッドまでつめて、ギシ、とベッドに乗る。



「痛ッ!ハルタ私の手踏んだー!」
「あ、ごめん。大丈夫?」
「…だいじょーぶ。もうちょっとつめようか?」
「いいよ。ミアがベッドから落ちるでしょ」
「そんなに寝相悪くないよー」



ぷんぷんしているのが暗くても手に取るようにわかる。
本当に、わかり易い妹だ。

とは言っても、妹と寝るなんて初めての体験だ。
こちら側を向いて寝るミアに少々の居心地の悪さを覚えながらも、僕は僕で自分の定位置を見つける。
すると、横から小さな声が聞こえた。



「ねぇハルタ」
「ん?」
「手握ってもいい?」
「…それも罰ゲーム?」
「ううん、罰ゲームじゃない」
「じゃあ、」
「ハルタと手を繋いでたらいい夢見れそうな気がしたの」
「…ふぅん」
「ダメかな?」
「いいよ」



身体を動かしミアと向き合う形で寝転ぶ。
出した右手に、ミアの右手が重ねられた。



「ハルタおやすみ」
「…おやすみ、ミア」



ふふ、と満足そうに笑ったミアは目を瞑る。
きゅっと握りしめられた手と同時に、胸の辺りも掴まれた気がしたのには気付かないふりをして、僕も静かに目を閉じた。











(よーハルタァ!朝早いな!)
(……サッチ)
(悪ィ、朝飯まだ出来てねぇわ)
(待つからいいよ)
(で?お前昨日どうだったのよ?(いひひ))
(どうって……)
(つーかハルタ隈出来てんぞ?)
(ああ、全然眠れなかったからね……)
(え、それって…(わくわく))
(あの馬鹿、寝相悪すぎ……)
(……あ、そう……(…))





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