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仲直り休憩




「あれビスタ?どうしたの?」
「ミア、ちょっといいか?」
「うん、なになに?」



ぱたぱたと生まれたての雛鳥が親の後をついていくようにビスタの後を追って来たミア。
その雛鳥が部屋に足を踏み入れた瞬間、バタンとドアを閉めた。
ビスタ大好きのミアの事だ。呼ばれてついてこねぇはずがねぇ。



「うぎゃっ!さ、サッチ!?マルコ!??」



ドアを閉めた音に振り返ったミアが案の定声を張り上げて俺達の名前を呼ぶ。
急にあわあわと挙動不審になって、くりっとした目は右に左に大忙し。ちったァ落ち着け。



「いや、あの、これは、その…!」



無意味に手を上下に動かして、何か言おうとするが言葉が続かないらしい。
俺とマルコは、そんなミアを見つつもドアの前から動かねぇ。



「ビ、ビスタぁぁ!!騙したの!?」



とうとう涙目になって後ろにいるビスタに詰め寄る。



「いや、騙したつもりはないが、ずっと逃げ回ってるのもよくないだろう」
「騙したんじゃん!もーびすたきらいー!」
「ははは、困ったな。ふたりともミアと仲直りがしたかったらしいんだが、」
「…仲直り?」



今にも大声で泣き出しそうだったミアがきょとんと顔を傾け、ゆっくりと俺達の方を向く。



「そうだよい。ミアに避けられるのは寂しいからねい」



隣にいるマルコがにっこりと笑顔を振りまきながらミアに近付く。
おいおい、流石にその顔はねぇだろ。嘘っぽすぎるぞ。バレんだろうが!

まあ俺も人の事言えねぇくれぇ嘘っぽい笑顔だってのは間違いねぇんだけどよ。



「そうだぞミア!俺らしばらくお前の顔もまともに見れなくて、すげー寂しかったんだからな?」
「だから、仲直りしようぜ?」
「俺らもう怒ってねぇからよ!」



な!とふたりでミアの前まで行き、怒ってないよアピールを全面に押し出す。
目尻に涙を溜めていたミアは、俺達のこの嘘っぽい笑顔に戸惑っているらしい。もう一息か?



「な?頼むよミアー!可愛い妹に避け続けられる兄の気持ちになってみ?」
「辛すぎて夜も眠れねぇよい」



嘘つけマルコ。お前昨日爆睡してただろーが。



「ほ、ほんとに?…怒ってない?」



だがそんなのはミアの知る所ではない。
まんまと信じ込んだミアに口元が緩むのを必死に押さえる。



「ほんとだって!俺達ミアがいねぇと元気でねぇんだよ」
「そうだよい。それとも、俺達の事信じられねぇくらい嫌いになっちまったのか?」
「そ、そんなことないよ!ふたりとも大好きだよ!」



よし!落ちた!
にやり、とマルコと目配せをする。






あんな可愛気のねぇ、許す気すらおきねぇ悪戯をされておいて、だ。
なぜ俺達がミアと仲直りを実行するまでに至ったか。それは至極簡単な事。

仕返しだ。


ほっとした表情になったミアに笑顔を振りまきながら、今朝のマルコとの会話を思い出す。

「おいマルコ。許せるか?」
「いや許せねぇよい」
「俺もだ」
「どうする?」
「もちろん、」
「「悪戯返し」」

にやっと笑った兄弟の考えていることなんて長年の付き合いでわかる。
俺達の考えた仕返しはこうだ。
まず、ミアと仲直りをしてゲームに参加させる。他のゲーム参加者に根回しし必ずミアが負けるように仕組む。つまり、必ずミアが罰ゲームをうけるのだ。

という話を他の兄弟にした所、意外と皆乗り気で、罰ゲームくじの箱までつくっちまった。ミアにしてほしい事を紙に書いて箱に入れ、ここから罰ゲームを決めるというもの。完全ランダムなので自分で書いた物が他のヤツにいくこともある。箱はミアに見つかっちゃいけねぇから、キッチンの奥に隠してある。
ちなみに、ラクヨウが書いていた罰をチラッと見たが、“1日中猫耳猫語”と書いてあった。まあ、ラクヨウの性癖には口は出さねぇが、ミアもこれで少しは懲りるだろう。







俺とマルコの腕に絡みながら「ホントごめんねふたりとも!」と眉を下げて謝ってくる妹に「いいってことよ」と笑顔で返す。



「ミアと仲直り出来てうれしいよい」
「わたしも!マルコとサッチと仲直り出来て嬉しい!」
「じゃあまた一緒にゲームしような!」
「うん!」



本当に嬉しそうに笑うミア。
こうしてりゃ、可愛いのにな。
わしゃわしゃと頭を撫でてやりながら、笑顔の裏で次のゲームはいつにするかと考えた。







(俺も混ぜろー!(がばっ!))
(うおビスタいたのか)
(気付かなかったよい)
(あ、ビスタ!ごめん忘れてた)
(………)





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