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だって寒いんだもん


秋島の冬。
風は冷たい。空気も冷たい。
だから、いくらお腹が減っていたって、ずっと布団の中に入っていたくなるのは仕方のない事なのだ。
だって寒がりなんだもん。



「エース」
「ん?」
「超だるい」
「風邪か?」
「ううん。起きるのが面倒なだけ」
「起きろ。飯行くぞ」



ひどい。
エースはもともと体温が高いから平気なんだよ。
この寒い中変わらず半裸だし。見てるだけで寒いわ。



「早くしねぇと布団ひっぺがすぞ」
「鬼」
「なんとでも」
「やだマジでやめて。寒いんだから」
「じゃあ起きろ」
「えー」
「えーじゃない」
「あ。いい事考えた」
「なんだよ」
「エース私のご飯持って来て」



ハートマーク付きで言ったら、無言で布団に手をかけたから慌てて冗談だと言って止める。
ホント、鬼か。



「起きねぇんだったら置いてくぞ」
「まじで?」
「マジで。飯食わねぇと俺死ぬ」
「それはよく存じています」
「行くのか寝るのか」
「うえー……イキマス」



のろのろと身体を起こそうとしたけど、少し動いたら布団の中に冷たい空気が入って来て、意思とは逆に布団を深く被ってしまった。



「………ミア」
「…………すみません」



だって寒いんだもん…!
でもそろそろエースの視線の方が冷たくなってきた。



「…ごめんって。私の上着取って」
「…ほらよ」
「ありがと」



布団から手を伸ばしてそれをずるずると中に引っ張り込む。
冷えた上着で少しだけ目が覚めた。
外に出ると寒いから、布団の中でもぞもぞとそれを着る。



「エースー」
「次は何だ」
「最後のお願い」
「…なんだ」
「靴下と靴履かせて!そしたらご飯行く」



にこっととびきりの笑顔でお願いする。
知ってるんだ。エースは私のこの顔に弱い。



「、仕方ねぇな」



ほーらね!

布団の隙間からひょっこり両足を出す。
肌に触れるエースの手が温かくて気持ちいい。
靴下を履かせてくれる間に、また眠りへと落ちてしまいそうだ。



「ほら。出来たぞ」



ぎゅっと靴ひもまで結んでくれて、エースに靴先を叩かれる。



「うい、ありがとー」



今度こそ、寒さを噛み殺して私はベッドから降りた。
うん、寒い!!
すかさず私専用の暖房、違った、彼氏の腕に絡み付く。



「エース温かい」
「俺は湯たんぽか」
「私専用ね。他の人には貸し出しません」
「あたりめーだばーか」



あったりめーだ!だって!
私だけじゃなくてエースも他の人には触らせないって思ってるのが素直に嬉しい。

そうだそうだ!エースは私のものだっつーの!
たとえメラメラの能力で温かくなくても、ね!



「ふふふ」
「んだよ?」
「んーん。ちょっと嬉しかっただけ」
「変なヤツ」



ぎゅるるるーとふたりのお腹が同時になって、ぷっと顔を見合わせて吹き出した。









((どたばたばったーん!!))
(サッチ飯―!!!)
(サッチごはーん!!)
(…お前らホント元気だな)




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