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彼氏の姿なんて腐る程見て来たし、今更ドキッとなんて滅多な事がないとしない。
ペンギンの帽子を取った姿だって、付き合った当初はもうドキドキが止まらないくらい緊張したけど、今はそんな事もない。


そうやっていろんなペンギンに慣れていって、それでも好きって思えて、ずっと一緒にいたいって思える。それってすごい事だし、ペンギンも同じ気持ちでいてくれる事が素直に嬉しい。


そんな熟年夫婦のような私たちだったけど、今日は久しぶりにドキッとしてしまった。



「ペンギン、目悪かったっけ…?」
「ん、いや。そんなことはないが」



いつものつなぎではなく、ゆったりとしたシャツに身を包んだペンギンは、椅子に座りながらくるくると片手でペンを回す。
私の好きな柔らかい髪の毛を揺らし、緩んだ頬の上に乗るのは見慣れない眼鏡。



「伊達?」
「まあ。度はほとんど入ってないからな」
「じゃあおしゃれメガネだ」
「そういう言い方するのか?」



近付いて、ペンギンの頬を撫でる。
かっこいいな、。
付き合い立てのあの頃に戻ったみたいに、心臓がとくんとくんと音を立てる。



「ペン、」
「ん?」
「これ、好き。かっこいい」
「そうか」



フッと笑って、私の腰に手を回す。
ぎゅっと引き寄せられて、ペンギンの顔が私のお腹にくっつく。
さらりと揺れるペンギンの髪に指を通して、私はもう一度言った。



「うん。好き。初めてペンギンにキスされた時くらいドキってしちゃった」
「そんなにか」
「うそ。キスされた時の方がドキってしてたかも」



ふふと笑ってそう言うと、ペンギンは私の頬に手を伸ばし自分の方へと誘う。
ゆっくりと目を閉じて、少しだけ屈んで、愛しさがいっぱい詰まったキスをした。



「でも、かっこいいって思ったし、ドキってしたのはホントだよ」
「俺はいつでもミアにドキドキしているけどな」



何年経っても変わる事のない想いに、自然と笑顔が溢れて、もう一度、愛しさを込めてキスを交わした。






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