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羞恥心を捨てて甘えよ!


いつもより数百倍の熱気と歓声。



「うぉっっしゃああぁぁぁぁあああ!!罰ゲーム負け取ったりィィィ!!」



女らしからぬ雄叫びとともに拳をぐっと天に向ける。
隣には打ちひしがれる隊長達。特にバナナを頭にくっつけてる1番隊の隊長。



「く、俺とした事がミアに勝っちまうなんて…!」
「諦めたまえマルコくん!私が存分に罰ゲームを受けてくるわ!」
「ミア〜!お前だけずりィぞ!」
「残念エース。罰ゲームは絶対なのだよ」



ふははは、と負けなのに勝ち誇った表情の私。
なぜなら、今回の罰ゲームの被害者は親父なのだ。
内容はそう。親父の膝に乗って、抱きつきながら「親父大好き!」と甘えること。

そんなの罰ゲームじゃないって?ノンノン。
考えてもみてよ。私はともかく、いい歳したおっさんが親父の膝に乗る!?それこそ羞恥心だらだらの罰ゲームじゃない。
とまあ最初はそう思ってたんだけど、私の読みは外れて、このおっさんどもは思いっきり白熱した。歳も歳だし親父に甘えるなんて出来ないから、この罰ゲームを言い訳に親父に近付くつもりだったようだ。どこの下心丸出しのガキだよって言いたくなる。
エースに至っては本気で拗ねているご様子。負けず嫌いがたたってうっかり勝ってしまったのが運の尽き。もう顔のにんまりが止まらない!!



「じゃ、罰ゲーム、受けてきます!」



むふ、と語尾にハートマークをつけて、可愛く手を振りながら親父のいる甲板へ向かう。
尚も悔しそうな顔で隊長達はぞろぞろと私の後を付いて来た。



「おーやーじー!!」



周りに花が飛んでいるんじゃないかってくらいの笑顔でスキップしながらいつもの場所に座っている親父に近付く。



「グラララ、いやに気分がいいじゃねぇか。どうしたミア?」
「うん。親父にお願いしたい事があって。今日は気分はどう?」
「娘に心配される程落ちぶれちゃいねェよ」
「よかった!」



親父は一口酒を飲むと、お願いってなんだ、と聞いて来た。
丁度後ろに隊長達もそろったみたい。ぶっふふ。視線が痛いわ!男の嫉妬ってなんて醜いの!!



「あのね、あの、」
「?」



膝に乗りたいって言うだけなのに、親父を前にすると急に羞恥心が出て来た。
最後にしたのがいつだったかも思い出せない。子供がするそれに、さっきまではうきうきしていたのに、急に「ガキか」って断られたらどうしようって不安になってしまった。



「その、昔みたいに、親父の膝に乗りたいなぁ、なんて…」



恥ずかしくて語尾が弱々しくなる。
本当に、親父に甘えるのなんて何年ぶりだろう。ビスタにならいつだって甘えられてるのに。
えへへ、と照れ笑いをしながら見上げる私に、親父は吃驚した顔で片眉を上げる。そしてその後、豪快に笑い出した。親父が笑うとモビーも笑う。ゆらゆらと揺れる船体にバランスを取りながら、ダメかな?と再度親父を見やる。可愛い末娘の渾身の上目遣い、親父には効くだろうか。



「グラララララ、なに企んでやがんだミア?」
「なっ、なにも企んでないよっ!」



何か企んでるなんて親父酷い。
確かに、罰ゲームだけど!でも私だって時々は親父に甘えたい!これは本当の本当の本心。

ざまあみろと馬鹿にするような笑い声が後ろの隊長達から聞こえる。
うるさい、負け犬、いや、勝ち犬共は黙ってなさい!



「娘が父親に甘えちゃダメなの?」



ぶーっと頬を膨らませ拗ねた目で親父を見上げる。
すると親父は大きな手を私の方に差し出しながら、「悪いわけねェだろ」とまた笑った。
それに嬉しくなった私は、親父の手にためらいもなく飛びつく。そのまま親父は私を膝の上へ。



「、わぁ」



本当に久しぶりのその場所に、少しだけ感動する。
ちょこんと親父の膝に座って、いつもより高い位置から海を眺めた。



「やっぱり私この場所好き!」
「末の娘はまだまだ甘えたい盛りみてェだな」
「親父にだけだよー」



にひひと笑う私はきっと、全面に幸せオーラを出しているに違いない。
ふと、下の方から視線を感じ目をやると、すっかり忘れていたが隊長達からの何とも言えない眼差しがずらり。
羨ましそうな目、私を殺しかねないような目、悔しそうな目、イライラしている目、拗ねている目。知らず知らずのうちに私の顔が隊長達を見下したようににんまりしていたらしい。それが隊長達の感情を煽る。けど今の私には痛くも痒くもない!だって親父といれば怖いものなんてないもん!


さて、そろそろ罰ゲームもとい幸せゲームを続けなければ。



「ねぇねぇ親父!」
「なんだ?」
「むふふふふ、えっとね、」



ぎゅーっと親父の大きな身体に抱きつく。
両手いっぱいに手を広げても腰回り半分にも及ばない。
けど、親父大好きって気持ちをいっぱいいっぱい込めてすりすりと頬までくっつけた。



「親父だーいすきっ!!」



気分良さそうに笑った親父とさっきよりも揺れるモビーに、私はもう一度ぎゅっと親父に抱きついた。








(で、おめぇらはそこで何してんだァ?)
(お、親父!こ、これは…(おろおろ))
(なななんでもねぇよい(そわそわ))
(潮風に、急にあたりたくなったもんで…(あせあせ))
((ブフフ!皆必死!大人って大変!))




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