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好き好き大好き




「もっと」




少しトーンを落としたミアの呼びかけにペンギンはなんだ?と優しく問いかけた。




「愛されてるって感じたい…」




その一言にペンギンは一瞬言葉をなくした。
久しぶりの島で、久しぶりの二人きりのデートだった。
島に到着した初日と2日目は色々と俺が忙しく、やっと二人きりになれたのだ。
幸せ気分で足を動かしていたのは自分だけだったのか。



「…どういう意味だ?」



知らないうちに彼女に対して何かしてしまったのだろうかと、不安になりながらたずねる。
そんなペンギンの心とは裏腹にミアは難しそうな顔をした。
自然と二人の足も止まる。



「なんて言えばいいかわかんないんだけど」
「何か気に触ることでもしたか?」
「あっ、そういうのじゃないんだけど、」



顔の前で両手を振って俺を否定するミアに少し安心しつつもまだ納得のいかない俺はミアに先を促す。



「えっと、なんて言うかね」
「?」
「ペンギンと、手を繋いだりとかさ」
「…?」
「えと、だから、だ、抱き合ったりとか、」
「…ああ」
「他にも、好きって言ったりとか、するじゃん?」
「…するが」



いまいちミアの言いたい事がわからず、胸の前で腕を組み言葉を続ける。
もじもじと言いにくそうにしているミアは正直珍しくてもう少し見ていたいが、はっきりしないのは余計に俺をいらだたせるのだ。



「それで?」
「えー、あとは、キスしたりとか、一緒に寝たりとか、さ」
「…?」
「んと、だからさ。そういうのが、なんていうか…」
「?なんだ、欲求不満か?」
「は!?」



一瞬にして顔を火照らせたミアに、悪いとは思ったが小さく笑う。



「……やっぱもういい」



真っ赤になり半泣き状態のミアは下を向いて頬を膨らませた。
怒らせることが目的ではないので、冗談だと、軽く謝ってミアを宥める。



「それにしても…さっきのどういう意味だ?俺はお前を、不安にさせているのか?」
「…そうじゃなくて、違うの。ちゃんとね、ペンギンは私のこと好きだと思うの」
「じゃあ尚更わからんな…」
「ふふ、うん。…でもね、」



一息、十分に置いてから。



「たぶん、足りない、の」
「足りない?」
「うん。…好きって言ってもらうと凄く嬉しくて、嬉しいんだけど、それじゃ何か足りなくなって手を繋いだりするじゃん。…わかる?」



意味はわかるが言いたい事が何かわからん。
女って面倒だな、と心の中で呟く。



「とりあえず先を続けろ」
「うわそれ絶対わかってない…」



ミアはぷぅと頬を含ませながら、俺の腕を解いて
俺の左手と自分のそれを絡めて、ぎゅっと繋いだ。



「だからさー、手を繋いだら、それだけじゃまた足りないって思っちゃって、抱きしめるの」
「まどろっこしいな。」
「ペンギン冷たいよ…」
「で、結論から言うと?」



俺のノリの悪さに少し落ち込んだようで、溜息をはきながら強いまなざしで俺を見上げる。



「だから!結論から言うと!つまり、ペンギンが足りないのっ!それとっ、私が、…ペンギンの事を好きすぎてどうしていいかわからなかったってこと!」



なんだこの可愛い生き物は。
緩む口を見られたくなくて、自然と絡められていない右手で口元を覆った。



「たくさん好きって伝えたいけどどうやって言えば一番私の気持ちが伝わるのかわかんないし、でもペンギンはあんまり好きって言ってくれないし。や、別に、ペンギンが私の事好きでいてくれてるのは知ってるよ?知ってるけどさ、でも言ってくれるのとくれないのでは全然違うじゃん?なんか私ばっか好き好きしてるみたいでヤだし!だからもっとペンギンから愛されてるって感じたかったの!ってかあーもー私意味わかんない!ペンギンも黙ってないでなんか言ってよばかー!」



さっきのもじもじとした雰囲気はどこへやら、ミアはマシンガンのようにしゃべりだした。
なかなか聞けないミアの本音(しかも嬉しい本音)を聞き、いてもたってもいられなくなった俺は、さっきから絡まっていた左手を自分の方に引っ張る。
それに引かれてついてきたミアの体をすっぽりと包んで抱きしめた。



「ミア可愛い」



耳元で囁くと、ぎゅうとすりつくように抱きしめる。
ミアも俺の背に手を回して抱きしめ返してくれた。



「…ペンギンってこんな大胆だったんだ」
「大胆?」
「だってここ街中…」
「気にするな」



抱き合ったまま言葉を交わす。



「ふふ、ペンギン大好き」
「…俺もミアが好きだ」
「!」
「………やばいな、抱きたくなってきた」
「!!」



がばりと体を離そうともがくミアに力の差を見せつけ、また腕の中におさめる。



「嫌か?」
「………その聞き方、ずるい」
「はは、じゃあ宿取りにいくか」
「んー、別に嫌じゃないんだけど」
「……何か他にしたいことでもあるのか?」



この流れでまさか断るのか、と若干不安になりながら、一応、尋ねた。




「どっちかというと、今日は宿とって一日中ペンギンとまったりしたいかも。ペンギンを独り占めって、ちょっと贅沢でしょ?」




えへへ、と照れたように笑うミアに、まぁ、今日くらいはそれでもいいかと、思いを改める。
結局俺はミアには甘いんだ。




「まぁ俺はいつでもお前にその“贅沢”をあげたいと思っているがな」
「!」






(ほんとはもっとずっとあなたのこと 想ってる)






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