top
name change
無意識の中の君の本音


まだ空が暗いうちに目が覚めた。
隣を見ると、ローが気持ち良さそうに寝ている。珍しく眉間に皺も無いし、深い眠りについているようだ。


いつもこのくらいよく寝てたら隈なんて出来ないのに、と思うが、基本眠りが浅いローなので毎日は無理だろう。


私とローの体温で温かくなったベッドは気持ちがよくて、また一眠り出来そうと目を瞑ったが、どうやら私の眠気は飛んでしまったようだった。目を瞑っても眠気は一向にやってこない。
一度冴えてしまった目はどうしようもなくて、ホットミルクでも飲んでこようかなと考える。


もう一度ローをちらりと見て起きそうにない事を確認し、私のおなかに回しているローの腕をそっとどけた。寝る時よりも緩くなった腕は思ったよりも簡単に動く。ゆっくりとローの腕から抜け出し、ベッドの端に腰掛けた。だらりと私がいた場所に投げ出された腕にはお馴染みの刺青。ぐっすりと眠るローは起きる気配さえ見せない。


なかなか見れる事の無いローの熟睡ぶりに無意識に目を細める。
ホットミルクの前に、もう少しだけ、この男の寝顔を見ておくのも悪くなさそうだ。


少しはねた短髪に、整った顔。規則正しく上下する身体。手の甲と腕、胸と背中の刺青。
閉じられた瞼。流れる睫毛。
今は見れないけど、すべてを見透かすような強いまなざし。
そして、普段の命令口調の男らしい低い声。そしてベッドの中だと甘さを帯びる声。

いろんなローを考えて、ああ好きだなぁ、と改めて思う私はきっともうローなしでは生きていけない。



ふと、ローの眉間に皺が寄ったのに気付く。
起こしてしまったかな、と不安になったが、先程から目を開く事は無い。
しばらくそのままローを見つめていると、またひとつ眉間に皺が増えた。




「???」




悪い夢でも見てるのかな。
起こしてあげた方がいいかな。


そっとローに触れようとした時、だらりと投げ出されていたローの手が動いた。
びっくりして声が出そうになったけど、それをどうにか押さえてローを見る。


ベッドの上を這うように手を動かすローに、やっぱりなんか変な夢でも見てるんじゃないかと心配になる。
眉間の皺も一向に減る気配を見せないので、起こしてしまうのは本意ではないけど、動くローの手をそっと握った。


ぴくりと動いた手は、そのまま私の手を握り返す。
とりあえず、動きを止めた手にほっと息を吐いた。

が、ほっとしたのも束の間、そのままローに手を引っ張られて体勢を崩した私はベッドに頬を打ち付けた。
驚いたのと痛かったので、声にならない悲鳴が喉をかすめる。



やっぱり、変な夢でも見てるのね。
敵と戦う夢とかかな、。



と、擦れた頬を気にしながら起き上がろうとする。
すると、握られた手が離れて、今度は私の腰に手を回した。
あれ、と思う間もなく、今度は後ろからローの腕に抱かれる事になっていて、もしかして起きてるんじゃ、と首を回してローを見上げる。
けどローの目はやっぱり閉じられたままで。




「…?…ロー?起きてる?」




小声で話しかけてみる。
だけど返事は無い。
小さく息を吐き、私はまた前を向いた。

軽くローの腕を触ってみたけど、強く回された腕は簡単には解けそうにない。
またベッドの中に逆戻りだ。
ホットミルクは諦めなきゃな、と心の中で独りごちたとき、急に後ろから低く掠れた声が聞こえて来て、ドキンと体が跳ねた。





「…ここにいろよ、ミア、」



今私に話しかけられる人なんてひとりしかいない。
ぎゅっと、先程よりも心なしか力が込められた腕に、そろりともう一度ローを見上げた。



「………?」



だけどやっぱり瞳は閉じたまま。
そのまましばらく見つめていたら、規則正しい寝息が静かに聞こえてきた。
よく見ると、眉間の皺も無くなっている。




なんだかふんわりとした気分になり、だらしなく口元が緩む。

なーんだ。ローも私なしじゃ生きていけないんじゃない。

ローの無意識の行動が思った以上に嬉しい。
目はまだ冴えたままだったけど、ローが起きるまではこうしていてあげようと、私を包むローの手をそっと握った。










(ねぇロー。昨日の事覚えてる?)
(昨日?)
(あ、やっぱ覚えてないんだ!(やっぱり無意識かぁ。ふふ))
(なんのことだ?)
(んーん、何でもなーい!えへへ)
(…??)





| TEXT |




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -