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bath☆love



「ミアー。風呂はいろうぜ。お湯ためといた!」



上陸して初日、一緒に宿を取っていたシャチにお風呂に誘われたので二つ返事でそれを了承した。
ガッツポーズのシャチにくすりと笑みが漏れ、20分したら来ていいよと声をかけて先にお風呂場へ行く。
久しぶりにゆっくり出来るかな、と少しだけ期待したり。


服を脱ぎ裸になって、浴室へと足を入れる。むわりとした湯気が体にまとわりついた。
備え付けのシャワーで手早く体を流すと、洗髪、洗顔、そして体を念入りに洗う。
早くしないとシャチが来てしまう。
体につく泡をシャワーで流し終わって、くるりと髪をまとめあげた所でシャチの声が聞こえた。



「ミア入るぞー?」
「うん、いいよー」



ざぶんと湯船につかりながら答える。
少しお湯が熱くて、ぴりぴりとした感覚が体を刺激する。

カチャと浴室に続くドアが開き、シャチが入ってきた。



「シャチ、この入浴剤何?いい香り」
「んー、柑橘系のなんか」



適当に返事をしてシャワーを浴び始めたシャチは、もちろんいつもの帽子も、つなぎも着ていないし、サングラスもしていない。
いつもは外に跳ねて明るめの髪が、水に濡れてしんなりとなる。



「お背中流しましょうか?」



機嫌良く言った私に、マジで!?と嬉しそうにこちらを向くシャチは子供みたいでまた笑ってしまった。
こっちに来て、と手招きをして浴槽の前に座らせる。



「やっぱ先に髪洗ってあげる。」



浴槽から上半身出して、体を伸ばしてシャチの横からシャンプーと私専用のトリートメントを取る。
途中脇腹をシャチになでられ、ひゃあと変な声がでた。



「…もう洗ってあげないよ」
「悪ィ悪ィ、つい手が」



じと目で抗議する私に、悪びれも無くいつもの人懐っこい笑顔でシャチは謝った。
もう、といいながらも許してしまう私は、いつもシャチに弱い。惚れた弱みだ。
シャンプーを手のひらに出し、水分をたくさん含んだシャチの髪に馴染ませる。
指の腹で丁寧に頭皮を刺激すると、髪と指にもこもこと泡がついて、時折ふわりと飛ぶそれは私の鼻をくすぐっていく。



「うおー、きもちいー」
「ふふ、痒い所はありませんかー?」
「無いけどもうちょっとして」
「かしこまりました」



余程気持ちいいのか、目を瞑っておとなしく座ってるシャチに、もう少しだけ指を動かす。おでこの生え際、耳の後ろと、もう一度丁寧に洗っていく。
そろそろいいかな、と最後に泡をまとめて捨てた。



「シャチ、シャワーこっちに届く?」
「ん、あー。たぶん」



湯船から出たくない私に、ん、と手を伸ばしてシャワーを取ってくれるシャチ。
ついでに私が流し易いように、少し体を倒してくれた。下に支えがあるように斜めに体を倒して止まっているシャチにどんな筋肉してるんだとつっこみたくなるが、見せられても困るのでそのまま泡のついた髪を流していく。
目に入らないように気をつけながら流していたら、急にシャチが目を開いた。
角度的に上目遣いのシャチと目が合う。するとシャチはにかっと笑った。



「ミア今日優しーのな!」
「いつもでしょ」
「ぶわっ、」



嬉しそうに言ったシャチにどきっとして、照れ隠しにシャチの顔に水をかけた。鼻に入ったー!ともがくシャチにシャンプー終わり、と告げて今度はトリートメントを手に取る。



「鼻が、つーんてする…」
「はいはいごめんね。もっかい頭下げて?」
「ん?シャンプー終わったんだろ?」
「うん。次トリートメント」
「え。いいよ別に」
「だめー。傷んでるでしょ。ずっと気になってたんだから」



さっとシャチの髪から水気を取って、トリートメントを髪に馴染ませる。特に毛先は念入りに。折角明るくて綺麗な色なんだから、もっと大事にしてほしい。



「はい。ちょっとおくから、先顔洗って?」
「うーい」



ごしごしと男らしく顔を洗うシャチを横目に、すこし冷えてしまった肩を温めるためとぷんとお湯に沈む。
足先はふやけそうなくらい温まっていたけど、またじんわりとした感覚が上半身を包み、にまりと幸せな気分になった。



「洗った!」
「はいはい。じゃあ髪流しちゃってー」



お湯から出たくなくて、投げやりに言うと、やだ流して、とまたあの笑顔で甘えてくる。シャチのこの表情に弱い私は、仕方ないなぁといいながらもまた流してあげるのだ。




髪も洗い終わり、今度はシャチの体を洗う番。背中をごしごししてあげる。
私と違う、大きな背中。あまり近くで見る事もないので、なんとなく、見入ってしまう。



「ミアと風呂はいると、お湯に浸かるまでが長いな」
「……いやなら自分でやって」



深い意味はなかったんだと思うけど、ふいにシャチがそう言ったものだから、怒ったように返答して、ぽいと手を離して私は湯船の中にすっぽりと全身を入れた。私の腕もそろそろ疲れて来た所だったから、丁度いい。



「え、いやそう言う意味じゃなくて!」
「知ってる。でも腕疲れたから代わって」
「…ちぇー」



案の定、食いついて来たシャチに正直に疲れた事をいうと、シャチは口を尖らせてしぶしぶを自分の体を洗い始めた。

シャワーで泡を流し終わって、ざぶりとシャチが湯船に入ってくる。
お湯が浴槽からいくらか溢れ出た。



「うおー、きもちいー」
「オヤジみたい」



私がいる方と反対側で先程と同じように目を瞑って言うシャチが可愛くて、つい思ってない事を言ってしまう。
それが気に食わなかったのか不満そうな顔でこっちを見たシャチが私に近寄って来た。そのままおなかに手を添えられ、簡単に体を反転させられる。
ぎゅっとおなかに両手を回され、シャチにもたれかかるように抱きしめられる。今更恥ずかしいなんて言える間柄でもないので、そのままシャチの方へ身を任せた。



「拗ねたの?」
「んーん、甘えたいだけ。」
「ふふ、珍しい」



いつになく素直なシャチに、ふんわりと心の中まで温かくなる。顔を横にずらして、シャチの頬にキスを贈った。



「シャチ、だいすき」
「ん、おれも」



くすりと笑い合って、どちらとも無く唇を合わせた。










(あれ、なんか髪がさらさらになってる気がする…)
(みたか私のトリートメントの威力!)





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