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しりとりまじっく


今日は雲一つない晴天。イコール!洗濯日和!!
じゃぶじゃぶごしごし、鼻歌を歌いながら手を動かす。



「ミア、洗濯かー?」
「うん!お昼前に済ませて全部干しちゃおうと思って」


さっきまで甲板で皆と組み手をしていたシャチが、もう自分の番は終わったのか、端っこで作業をしている私のもとに歩いてきた。


「隣いい?」
「もちろん」


うおーいい天気だーといいながらシャチはどかりと私の隣に腰を下ろした。



ごしごし
じゃぶじゃぶ
ごしごし
じゃぶじゃぶ
ぎゅっぎゅっ



同じ作業を黙々とこなす私の隣で、シャチは私の手元をじっと見てる。
なんか、気になるんですけど…。



「…なに?」
「いや、別に…」
「暇なの?」
「うん、ひま」



手は止めずに、会話を続ける。



「うーん、じゃあ、何かお話しする?」
「んー、いや、しりとりしようぜ」
「しりとり?」
「おう」
「うん、いいよ!」



じゃあ私からね、と新しい洗濯物に手をのばしつつ続ける。



「んー、最初の言葉はねー、…“ハート”!」
「と?んー、…と、“突然の、チャンス”」
「え、それアリなの?」
「ス!」
「えー…まぁいいか…。“するめ”」
「(色気ねぇな…)“メロリンラブ”」



ぶはっと吹き出してしまった。



「ブだぞブ」
「はいはい。じゃあねー、ぶー…、“武器”!」
「“キスしたい”」
「(シャチ欲求不満なの?)い、“威嚇”」
「(オレをか?)“クルンてしてる寝癖もかわいい”」
「??…あ!また“い”??んー、“意味不明”。また“い”だよーん」
「い…、“今すぐ抱きしめたい”」



“い”返してきた!ひどい!!
ここまできたらもはや内容はスルーだ。
目で非難するけど、にやりと笑ってかわされた。



「…………“いじわるだ”」
「…“大好きだ”」
「……、“大嫌い、だ”…」



なに、このしりとり……。
いつの間にか私の手の動きも遅くなる。

ゆっくりと、顔を上げてシャチの顔を見る。
さっきと変わらず、私の横に座り、組み手をしている他のクルー達を遠目に見ている。
でも、サングラスで隠れた目は見えないけど、シャチの頬はほんのりと赤かった。
そのまま、シャチは次の言葉を紡ぐ。
視線は、絡まない。



「“抱きしめてもいいですか”」



どきん、



「か、“勘違い、しちゃうよ”…?」
「“よく考えて、返事しろよ”」
「……!」



きっと、今のあたしリンゴみたいに赤くなってる。
完全に止まってしまった手にも気付かずに、このままでは恥ずかしさで爆発してしまう、と全く働いていない頭でこの場を切り抜ける言葉を探す。



「よ、よ、よよよ、よ、“よるまで、まって”……!!」



驚いた顔をしたシャチに、今のはダメだったかと焦る。
すると不意に、シャチが私の髪に触れた。


ば、ばくはつする……!



「…“ってことは、少しは期待してもいいんだよな”?」

 

耳元で囁かれ、普段聞かないシャチの低い声にビクンと体が跳ねた。



「……さっきのしりとり、全部本当だから。髪、はねてるぞ」



シャチに触られていた髪を反射的に両手で押さえつける。
ククと笑って立ち上がったシャチは、また皆のいるところまで歩き出した。



「じゃー、オレもうひと暴れしてくっから」



そう言って振り向いたシャチはもういつものシャチで。
火照ってあついのは、私だけみたいだった。



どうしよう、
まだ洗濯物山積みなのに、


彼に目を奪われてしまったみたい。


(メロリンラブ、か)






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