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共食いはだめです!



「うおおお、セーフ!!」
「よっしゃ!勝った!」
「あああああぁぁぁ!!ま、負けた……!」



周りが一気に盛り上がる。



最近の白ひげ海賊団皆がはまっていること。
それは罰ゲーム。
ルールは簡単。
1.鬼ごっこでも、カードでも、なんでもいいから勝負して負けたら罰ゲームをする。
2.先に罰ゲームの内容を決めてゲーム開始。ただし罰ゲームは「誰かに何かをする」こと。
3.その誰かはゲームには参加できない。
4.その誰かを先に決め、その人に知られないようにゲーム開始。
5.つまりその誰かとは、完全に罰ゲームの被害者である。



今回の被害者は、1番隊隊長のマルコ。
敗者もとい罰ゲームを受ける可哀想なのは私、ミアだ。


そして問題の罰ゲームはというと…


「なんで…?最近ずっと調子よかったのに…」
「まー諦めろ!ブフッ!罰ゲーム、マ、マ、マルコに、ぶはっはっはっは!!!」
「ちくしょーエース覚えてなさいよ!」
「プフ、ミアちゃん頑張って。俺パイナップル用意してくるわ」
「く、サッチ…!」
「殺されないようにね。食べさせてあげるまではいけそうだけど」
「ハルタぁー!目がすっごい笑ってる!!」



そう、今回の罰ゲームは、マルコにパイナップルを食べさせてあげること。
そこまではいい!百歩譲ってあーんまではしてやる。
でも、でも…!
そのあと私には2つの難関があるのだ。
一つ目はマルコに「共食いはだめなんだよ」ということ。
二つ目は、「マルコも輪切りにして食べちゃいたい!」ということ。



「もー絶対死ぬ!殺される!」
「つっても罰ゲーム決めたのほぼミアじゃねーか、ププ」



まだ笑いを抑えきれていないエースに一発お見舞いして、ビスタに泣きつく。



「だってサッチあたりが負けると思ったんだもん!ね、ビスタ変わって」
「おいおい、冗談だろう。他のわがままは聞いてやれるが、こればかりはなぁ?」
「そーだぜミア。諦めろ!逃げるは海賊の恥だぞ!」



ぽんと肩をたたくエースに殺意を覚える。
同時に、次の罰ゲームはもっと悲惨なものにしようと心に誓った。



「はーいミアちゃん、パイ、ぶふふっ、パイナップル」



早くも食堂から戻ってきたサッチが、パイナップルの入ったお皿を私に手渡す。
覚悟を決める時が来たようだ。



「「「「「じゃ、頑張って!いってらっしゃい!!」」」」」



隊長たちのこれでもかというくらいの笑顔に見送られ、マルコのいる甲板へとパタパタと駆けていく。


見つけた。
遠くを眺めるように海を見つめるマルコは、いうなれば、そう、黄昏パイナップル。
やっべ。自分で言って吹きそうになっちった。


マルコに気付かれる前に一度後ろを振り返った。
甲板のやや遠くに先ほどゲームに参加していた隊長たちがずらりと並ぶ。
あいつら一人残らずニヤニヤしやがって!
べーっと舌を出してから、またくるりとマルコの方へ向き直った。
隊長たちのことだから、これだけ離れてても会話は筒抜けだろう。


すうっと息を吸い込み覚悟を決める。




「マルコー!」


振り返ったマルコに、顔いっぱいの笑顔を作って駆け寄る。
だめだ、既に笑いそう。マルコの奇抜ヘアから目が逸らせない。
私の作り笑いよ、頼むから、もってくれ。



「どうした?」
「別に何もないんだけどね、なんてゆーか、」
「なんだよい」
「このぱ、ぱふっくふふっ、」
「…気持ち悪ィな、なんだよい」



マジでドン引き顔のマルコに、若干傷つく。
可愛い妹に気持ち悪いなんて、何て駄目な兄なんだ。

すうはあと一度深呼吸をし、込み上げていた笑いを落ち着ける。



「うん、このパイナップルね。凄く美味しいから、マルコにも食べさせてあげようと思って」
「………」



おうおう、マルコさんが怪訝な顔をしていらっしゃる。
頼むから食べてちょうだいよ。



「ああ、罰ゲームかい」



疑うようにこちらを見つめた後、納得したようにそう続ける。
さすがマルコ。ばれてしまったら仕方ない。



「うん。そんな感じ」
「で、今回の罰ゲームは俺にそれ食わせることか?」
「それだけじゃないけど」
「何か入ってんのかい」
「あ、それは絶対ない。サッチが準備してくれたからちゃんと美味しいと思うよ」



サッチは食べ物にはこだわりを持ってるのでそんなことはしないと思う。
そこは自信があったので、しっかりと否定する。
するとマルコはそうか、と言って、お皿に乗っていたフォークを取り、一切れのパイナップルに突き刺した。



「あ、駄目だよ。私がマルコに食べさせてあげるの」



そのままマルコが食べてしまうと思ったため、急いで止めてみたが、パイナップルが刺さったフォークはマルコの口へは行かず、私の口の前で止まった。



「毒味。」
「……大丈夫だって言ってるのに」



むうと口を尖らせてから、ぱくりと差し出されたパイナップルを口に入れた。
少しすっぱいと思ったけど、噛むとじゅわっと広がる甘さに思わず口が綻ぶ。
私の反応を見て安心したのか、マルコは私の方にフォークを向けた。



「食わせてくれるんだろい」
「あ、うん」



フォークを受け取り、パイナップルに突き刺す。
はいあーん、と言いながらフォークと共に再び顔を上げると、意外にもマルコの顔は近くにあってどきりとする。わざわざ腰折って高さあわせてくれるとか、そんな優しさいらないよお兄ちゃん。
いつもよりも近い距離で、口をあけてぱくりとフォークに食らいつくマルコに、「あ、間接キス」と変なことを考えた。一瞬見えたマルコの赤い舌が妙に生々しくて、内心焦る。やばい、早く罰ゲーム、。



「まままるこ!」
「んあ?」



フォークからパイナップルを抜き取り、マルコは気だるげに返事をした。



「ととっ、共食いはいけないんだよ!!」



やばい、勢いに任せて大きな声で言ってしまった。
周りにいたクルーから、笑いをごまかす咳払いがいくつか聞こえる。
そしてその向こうから、大爆笑が聞こえてきた。おそらく一番笑ってるのはエース。あんた後でシメられるよ。


と、他人の心配をしている暇なんて私にはないんだけど。



「いい度胸してるよい」



青筋を立てたマルコにミシミシとなるくらい片手で頭を掴まれる。



「マルコごめん!脳みそつぶれる!」
「一度潰してやった方がいいんじゃねぇのかい?」
「ごごごごごめんってマルコ!罰ゲーム、ただの罰ゲームだってば!」



マジで脳みそ潰されかねない。
さっき不覚にもどきんと鳴った心臓は、今は違う意味でばくばくと音を立てている。



「で?これで罰ゲームは終わりかよい?」



相変わらず鬼の形相で私に問いかけるマルコ。近い!怖い!鬼!

これで終わりだったら良かったのだが、私にはまだ残っているミッションが一つある。
流石に死にたくはない。
頭をつかまれたまま、にへら、と笑ってみる。



「………まだ何かあんのかい」



はあと呆れ顔でため息をついたマルコは、ついに私の頭を解放してくれた。
マルコに気付かれないようにほっと息を吐く。いつでも逃げれる準備だけはしておこう。



「で、あと何個あんだい」
「あとひとつです」
「早くしろよい」



腕組をしたマルコに鬼の形相で見下ろされる。
促されても、雰囲気的に言えないんですけど。
びくびくとしながら、ちらりとマルコを見上げた。



「お、おこらない?」
「怒るようなことなのかい」
「あ、じゃあ、言うから、耳ふさいどいてくれない?」
「早く言った方が身のためだと思うがねぇ」



にこりと笑ったマルコは目が笑っていなくて余計怖い。



「だってマルコ怖い!!」
「怖くさせてんのはお前だろうが」



バシッと頭を叩かれる。地味に痛い。
いつまでたっても口を開こうとしない私にマルコは二度目の呆れ顔とため息。
普通だったら私が言うまで待たないで怒って行ってしまうのに、マルコはそんなことしない。なんていうか、変なところで律儀だ。



「そうだな、どんな内容かは知らねぇが、可愛く言えたら怒らねぇよい」
「マジで!?」



にやりと口元を上げたマルコは私を見て頷いた。
鬼とか言ってごめんなさい!やっぱりマルコは優しいお兄ちゃんです!



「じゃ、じゃあ、言うね!」



マルコが怒らないなら怖いものはない。
きらきらとした表情に満面の笑顔で元気よく言った。



「マルコもパイナップルみたいに輪切りにして食べちゃいたいな!」



ピシリ、とマルコの表情が固まり、青筋が浮かんだのが見えた。



「えぇー!!怒らないって言ったじゃん!うそつき!!」



マルコを信じた私が馬鹿だった!!
いつの間にか周りのクルーは避難していて、後方からはエースを筆頭に隊長たちの馬鹿笑いが聞こえる。



「…怒ってねぇよい」
「いやいやいやいや怒ってるでしょ!?」



腕を組んでいる怒りを静めようとしてるマルコは今にも血管が切れそうで逆に心配してしまう。
マルコはそのまま息をゆっくりと吐き出すと、ちらりと爆笑してる隊長たちを見て、また私を見た。



「輪切り云々の箇所は、聞かなかったことにしてやるよい」
「え、」
「俺は、いつでもいいけどねい」



急に、余裕のある表情になったマルコについていけず首を傾ける。
すると、マルコは腰をかがめて私の耳元でそっと囁いた。



「俺を食いたいんだろ。ミアも随分大胆になったよい」
「な、…い、意味が、ちが……!」



ばふんと顔が真っ赤になる。
後ろでぎゃーやめろーという隊長たちの叫び声が聞こえてきて、恥ずかしくて手に持っていた残りのパイナップルを皿ごとマルコにに投げつけた。
そのままマルコを置いて走り出す。パイナップル漬けマルコなんてパイナップルになってしまえ!!



うわあああんと全力疾走してそのまま私はビスタに抱きついた。



その後ろで、パイナップルを皿ごと華麗によけたマルコが隊長たちに笑顔で中指を立ててたことなんて、私には気付く余裕すらない。




でもまあとりあえず、罰ゲームコンプリートということで。










(大丈夫かミア?よく頑張ったな)
(うええぇぇんビスタぁぁ!マルコに処女奪われるかと思った!!)
((((((えぇぇえぇ!?ミア処女だったのか!??))))))
((やば!)こ、こ、ことばのあやだよばかぁぁぁ!へんたいちょう共め!)
(よしよし、泣くな。あとで美味しい紅茶でもいれてやろう)

((((((へぇ、ミアが、ねぇ…))))))






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