top
name change
ごめんなさいと言えない彼






ぎりぎりと頭の上で押さえつけられた手が痛む。
何故、私はこんな状況にいるのか。



怒っていたはずだ。
ローじゃなくて、私が怒っていたはずなのだ。
今日は、ふたりでデートしてくれるって約束だったのに、いつになっても起きてこないから。
布団ひっぺがして、怒って。だって、もう夕方。



キッとローを睨み上げて見るが、ローは変わらず鋭い目で私から目を逸らさない。
加えて、一言も、話してくれない。
片手でまとめあげられて壁に押しつけらている手が悲鳴を上げる。



なんでよ。
私悪い事してないじゃない。

なのになんで、私が悪いみたいに、こっちをみるのよ。


ローの強気のその目が、だんだんと私の中の不安を掻き立てる。
絶対に、私、なにもしていない。悪いのはローだ。
すごく、すごく楽しみにしていたのに。


こちらも負けずにローを睨み返す。
無言の睨み合いがしばらく続いた。


けど、それは長くは続かなくて。
睨み上げる私の視線が、だんだんと弱々しい物へと変わる。


わ、わたし、ローに何かした…?


ローの無言の視線に、不安は大きくなるばかり。
悪い事したなんて、全く心当たり無いけど。
それには100%自信があるけど。
でも、この目が、この視線が、私を不安にさせる。
ローの気迫に、押される。


不安に負け、へにょりと私の眉が下がったところで、ローの口元が緩みフッと吐き出すような笑い声が聞こえた。



「?」



ローが分からない。
ローも怒ってたと思ってたのに、今度はいきなり笑うなんて。


首を傾ける私に、視線はそのまま、やっとの事でローが口を開いた。



「謝ったら許してやるよ」
「え?…ご、ごめん…?」



よくわからなくてとりあえず謝る。

あれ?ちょっと待って、何で私が謝ってるの?
悪いの、ローだったよね?


いつの間にか形勢が逆転しているこの状況に少し混乱する。
きりきりと痛んでいた手が、解放され、ほっと息を吐いたと同時に、体が浮遊感に襲われる。



「う、わっ!ちょ、ロー?」
「寝るぞ」
「え!?まだ寝るの!?」


軽々と私を抱き上げたローは、私がひっぺがした布団を床から拾うとベッドへとダイブする。
そのまま私を抱きしめる形で再び何も無かったかのように眠ろうとした。



「あのさ、ロー?」
「なんだ」
「私ローに何かしたっけ?怒らせるようなこと」
「いや」
「じゃあさっき謝ったのって謝り損?」
「クク、そうだな」
「……ローが謝ってよ。そしたら許してあげる」
「ミアが代わりに謝っただろうが」
「何それ理不尽!」



このおとこは!

ムカついたので私のやや上にあるローの顎髭を地味に一本抜いてやった。



「………痛ぇな」
「私の心の痛みだよ」
「怒んな。寝足り無ぇんだよ」
「…もしかして、また朝まで医学書読んでたとか言わないよね?」
「………」
「………」
「……昼までだ」
「…信じられない。私楽しみにしてたのに」
「明日美味いもんでも買ってやるよ」
「ジェラート食べたい」
「いくらでも食え」
「明日はローが荷物持ちね」
「ベポ連れて行くか」
「………」



ぷぅと風船のようにふくれる私を見て、フッと笑ったローはまた私をぎゅっと抱きしめた。



「わかってる。明日はふたりだ」



まだ今日の事謝ってもらってないけど、仕方ないから、今回は許してあげるよ。






| TEXT |




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -