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あれから数ヶ月経って、ミアとも普通に話すようになっていた。



「で、どうなのよ」
「なにがだ」
「とぼけちゃってー。ミアよ、ミア!」
「別に、普通だ」



酒を片手に俺に詰め寄っているのは、ミアの親友のナミ。
今日はルフィの兄貴が出張とかで、ルフィの家で大騒ぎの大宴会だ。
メンバーはルフィ、ナミ、ミア、ユースタス、ロロノア、ボニー、ウソップ、そして俺だ。ルフィが手当り次第に来れる奴をかき集めたらしい。
そして今俺は酒豪のこの女に捕まっている。



「なーんだつまんない。トラ男君って噂程積極的じゃないのね」
「トラ男ってなんだ」
「早くものにしちゃいなさいよ」
「それが親友に対する言葉とは賞賛に値するな」
「いいのよミアはこんくらいしないと次に進めないんだから」
「次?」



ナミの言葉に引っかかりを覚え、酒を流し込みながら聞き返す。



「やっば、口滑った」
「飲みすぎだ」
「まだまだ飲めるわよっ!」
「で。さっきのはなんだ」
「あー。あの子高校の時すっごい軽い男に騙された事あんのよね」
「あいつが」
「まぁ女子校だったから、出会い無かったあの子を私が振り回しちゃった結果変な男に捕まっちゃったんだけど」
「お前のせいじゃねぇか」
「それから恋愛関係全く興味なくなっちゃったみたい」
「へぇ」
「あんたは違うわよね」
「そうみえるか?」
「見えなくないから聞いてんでしょ」



紅潮した顔で俺を睨んだナミを見て、口角をあげる。
ミアを騙した軽い男なんかと一緒にしてんじゃねぇよ。



「少なくとも、ミアは俺のタイプじゃねぇ」
「……」
「が、自分から女が欲しいと思うのは初めてだ」
「…信じるわよ」
「ああ」
「泣かしたらぶっ殺すわよ」
「泣かさねぇよ」
「…よし。ベランダへの道をゆずろう」



飲み過ぎたミアは酔い醒ましにベランダで風にあたっている。
ベランダを指差したナミを見て、フッと口が緩んだ。

周りを見回すと、飲み比べ中のロロノアとボニー、いつも通り馬鹿な事をして場を盛り上げているウソップとルフィ、飲みつぶれて爆睡中のユースタスがいる。



「あいつら止めとけよ」
「了ー解ッ」



ぐいっと最後に酒を流し込み、腰を上げてベランダへと出る。
冷たい風が酒で火照った体に当たり、気持ちいい。



「あ。」



くるりと振り向いたミアの頬にはほんのりと赤みがさしていた。



「ローも酔い醒まし?」
「そんなとこだ」
「ふーん」



そう言ったっきり、ミアはまたベランダの手すりに腕を乗せ、夜の街を眺めた。
部屋から聞こえるあいつらの声は、遮断されたこの空間では遠く聞こえ、まるで別の場所に来たような錯覚に陥る。



「ナミにきいた」
「なにを?」
「お前の高校の時の恋愛事情」
「あー…。ナミおしゃべりだね」
「つくんねぇの、彼氏」
「うーん、今はいいかな」
「騙されるからか」
「別に、そうじゃないけど」
「じゃあ、俺に騙されてみるか?」
「……、」



たっぷり間があいた後、ミアはゆっくりとこちらに視線を向けた。


「…冗談」
「こんな冗談言うかよ」
「……」
「どうする?」
「騙されるって分かってて、付いていく馬鹿はいないよ」
「騙されるかそうじゃないか、決めるのはお前だけどな」
「、なんか、ずるいなぁ」



俯きながら呟いたミアは、ベランダの手すりをぎゅっと掴んだ。



「試してみるか」
「え?」
「嫌ならやめればいい。決定権はお前にある」
「試すって、何を」
「ミアの気持ち」
「どうやって」
「こうやって」



不安そうな顔で見上げてくるミアの目を見つめながら、そっと顔を近づける。
あ、とミアが声を上げる前に、ゆっくりと、その唇を塞いだ。

軽くリップ音をたてて、唇を離す。


ミアは先程と変わらぬ体勢で固まったまま動かない。
しばらくしてやっと目を動かし、俺を見つめ返した。心なしか、さっきより頬が赤い。



「で?どうだったんだ?」
「…どうって……、別に、……嫌じゃ、なかった、けど…」
「よくわからなかったならもう一回してやろうか」



とりあえずは嫌じゃないと言う言葉に胸を撫で下ろし、冗談でもう一度しようかと言ってみる。
ミアは一瞬目を彷徨わせ、もう一度俺を見つめてこくりと頷いた。
予想外の反応に、気分が高揚する。緩む口元を隠すこともせず、今度は先程よりも深く、キスをした。










(やっぱり、少し騙されてみる事にした)
(一生かけて騙してやるよ)






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