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最近は全てが好調。親父の船に乗って、皆とも仲良くなって。
ただひとつ、ミアの様子がおかしい。スペード海賊団の時からずっと隣にいてくれて、どんな時でも俺の味方でいてくれた、大事な女。この船で荒れてた時も、いつか話してぇと思ってる俺の事情も本人はまだ知らねぇのに、なにも言わずずっとそばにいてくれた。
出来る事ならミアにはずっと笑っていてほしいし、そのとなりにはいつも俺がいればいいと思ってる。けど、最近の俺の好調具合とは反比例するように、ミアの笑顔は見れなくなってしまった。最初は、ミアは俺と違って頭いいし医者だから慣れねぇ大きいこの船での仕事が大変なのかとも思った。でもちょくちょく医務室へと立ち寄ってミアを盗み見ると、仕事はしっかりしてるようで、この線は早々に消えた。本当は会って抱きしめてキスのひとつでもしてやりてーが、顔を見るだけでも安心するし、仕事の邪魔はしたくねぇから、医務室に行ってんのはミアには内緒だ。礼儀正しい俺はナース達にミアのことよろしく頼むのも忘れねぇ。

それからしばらく、相変わらずミアの変化の理由はわからねぇままだったけど、今日は絶対ミアの笑った顔が見られると思って、わくわくとその時を待ってたんだ。
夜、月も高く昇った頃、ミアはいつも俺の部屋に来る。流石親父の船と言うべきか、この船の医療はミアにとっても新鮮なものばかりで、毎日夜遅くまで勉強してるのだ。俺は真似できねぇけど。



「ミア、聞いてくれ!俺2番隊の隊長になったんだぜ!」



控えめなノックとガチャリとドアが開いた音に待ってましたと顔をあげ、ミアを確認すると俺は待ちきれずにそう告げた。てっきり嬉しそうな笑顔でおめでとう頑張ってねって言ってくれると思ってた。けど、ミアの顔は強ばっていて、一瞬合った目も逸らされる。
流石にこれは俺も少し堪えた。



「…お前最近感じ悪くねぇ?」



気付いたら口から滑りでてた言葉。
しまったと思ったけど、わからねぇミアの気持ちを確認するチャンスだと思い言葉を正す事はしなかった。
ミアはドアの前から動こうとしない。下唇を噛み、目線は落としたまま。
そんなミアの態度に次第にイライラしてきている自分に気付く。
なんなんだよ。俺なんかしたか?



「黙ってねーでなんか言えよ」



思ったよりも口調が強くなってしまった。けどそれでも何かを耐えるように言葉を発しないミアに俺のイライラは募るばかり。
俺が言わなきゃ分かんねぇ馬鹿なことくらい、ミアも知ってんだろうが。



「はー。ほんとわかんね。不満があんならはっきり言えよ。」



イライラを吐き出すように溜息を吐きながら言った。
こんな会話してぇわけじゃねぇのに、何も言わないミアに酷い言葉ばかり投げ掛ける。
大切にしたいはずなのに、口から出てくるのは優しさの欠片もない言葉ばかり。あれ、そういや最後にミアを気遣う言葉を言ったのはいつだ?もしかして、言葉が足りなかったのは、大事なこと伝えんの忘れてたのは、俺の方だったのか?



「…ほんとめんどくせぇ。」



自分に対する言葉がポロリと口をついて出た。と同時にミアの瞳が一瞬揺れたのを俺は見逃さなかった。やばい、今のはそういう意味じゃなくて、と言い訳じみた言葉を言うより先に、ずっと閉ざされていたミアの口が開く。



「面倒ならやめればいいじゃん」



ざわりと心臓が嫌な音を立てる。
なんで、今になって口を開くんだよ。
もしかして、ずっと、我慢してたのか?
ずっと、俺と別れてぇと思ってたのか?
俺は、お前のこと、まだこんなに想ってんだぞ。

ミアは俺が何か言うのを待っているようだった。
でも俺はミアの言葉がショックすぎてすぐには言葉が続かない。
しばらく沈黙が続いたが、耐えきれなくなったのか、ミアは顔も上げずに部屋を出ていこうとする。無意識に、ミアの手を掴んで引き留めた。


このままじゃダメだ。
俺も、ミアも、ちゃんと思ってる事伝えねぇとダメだ。



「ミア、少し話しようぜ。」








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