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気分屋さんの判断基準



航海士のベポに指示(というかお願い)されて、島に到着して早々、たまっていた海図の作成をした。
ベポの手は大きいから、海図を書くのは苦手みたいで、忙しくない時以外は補佐の私が書いている。まだまだベポの技術には程遠い私だけど、海図だけはベポよりも少しだけ上手に書ける自信があるのだ。といっても、手が空いているときはベポが自分で書いているのだけれど。

いつもはゆっくりと丁寧に仕上げていく海図も、今日ばかりはペンを持つ手が急ぐ。
戦えない私は誰かと一緒じゃないと上陸させてもらえない。他のみんなと比べてそこまで上陸に拘っているわけではないので、普段だったら船でお留守番も気にしない。
でも、今日だけは事情が違ったのだ。

最後の一枚を仕上げ、ペンを投げるように机に置き、船長室へと駆け込んだ。



「ねぇロー、島の上陸許可ちょうだい!」
「だめだ」



船長ご自慢のふかふかな椅子に長い足を持て余すように座っているローは、こちらに目を向けることなく私のお願いを一蹴した。
でも、このくらいでへこたれる私ではない。



「だってこの島あの有名デザイナーの直営店があるのよ?!」
「だからなんだ」
「だから行くしかないっていってるの!」



膝の上に置かれていた本から視線を上げる。
かち合う視線に怯みそうになるが、今をときめくカリスマデザイナーさんの直営店に行くため、私も負けてはいられない。



「お前自分の立場わかってるのか?戦えないお前がどうやって外にいく?」
「大丈夫よ海賊だってばれないように行けば!」
「それで今まで何度トラブルに巻き込まれた?」
「大丈夫、指で足りる程だから」
「その指切り落とされたいらしいな」



ローの場合、冗談で済まされないその言葉に一歩後ずさる。
指なくなったら海図かけないじゃない!



「冗談よ。ねぇログが溜まる前に行きたいの!許可してよっ」
「だめだ」



人がこんなに下手に(?)でてるのに……!!



「ローのケチ!だいたいなんでこんな時に限って皆私を置いて外に行っちゃうのよ…」
「…まぁ、俺がついていってやらないこともないが、」
「本当!?」



ローもいいとこあるじゃない!
融通聞かない偏屈変態医者野郎とか思っていたけど、意外に優しい所もあるんだ、と少し見直した。



「ああ、お前が“お願いします”と頭をさげたらな」



見直した私が馬鹿だった!前言撤回!てへ!



「どうした?俺の気が変わらないうちに早くしろよ。行きたいんだろ?」



にやにやとこちらを見ながら先を促す鬼畜船長に流石の私も本音が(小声で)ポロリとこぼれる。



「くそふぁるがーむかつく〜!!」
「行かないのか、なら読書の邪魔だ出ていけ」



悪態つくのも許されないのか!
さらりと打ち切られそうになった希望の光に、考える間もなく私はプライドのプの字も投げ出した。



「行きます行きたいです連れていってくださいお願いしますロー船長様!」



ぺこりと勢いよく頭を下げると、また悪そうなにやり笑いのローと目が合った。



「3分以内に甲板に出てこい」
「(!)ありがと、ロー!」




ローにお礼を言うと同時に船長室を飛び出した。
3分越えるとローの気が変わってしまうかもしれない。
ショルダーバッグを肩にかけ、お気に入りの帽子を頭に乗せて、ローの待つ甲板へと急いだ。












(わぁぁぁ!!これも、あれも、可愛い!!しかもここ限定!!(きらきら))
(……ミア金あんのか?)
(だーいじょうぶ!1着分くらいなら余裕であるよ!)
(1着だと……?)
(え、だってこのブランド高いし、無駄遣いは出来ないもん)
(俺は1着のためにここまで来たのか?)
(……ご、ごめん)
(まあいい。好きなのを選べ。買ってやる)
(え!いいの!?(きらきら))
(その分船で働けよ(にやり))
(もちろん…!(ロー様!!!))





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