きっと来年もおれの隣には君がいる。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1641.gif)
「サボ」
「ん」
「お誕生日おめでとう!」
「……おー」
歳を重ねるということは息をしているだけで毎年訪れるわけで、とりわけ「その日」を特別に思ったこともない。ただ、これまでと違うのは、隣にコイツがいるという事実。
たったそれだけで。おめでとう、と言葉を告げられただけで、むず痒くなる心に、おれは蓋をするようにそっけなく答えた。
「なーに?あんまり嬉しくなさそうね?」
「別に。ただひとつ歳とっただけだろ」
あたかも興味がないように振舞うのは、きっとおれがコイツに祝われているのを喜んでいる証拠だ。
「私は嬉しいのにな、サボの誕生日」
「…そういうもんか?」
毎年来ていたこの日は、おれにとってはいつもの一日だった。
だけど、今年はそれがどうも違うらしい。だからこそ、その感情を素直に受け取っていいものか、若干の戸惑いを覚える。
「うん!そーいうもんだよ」
そんなおれの葛藤を吹き飛ばすように、ミアはおれの隣でふわりと笑った。
きっと、コイツがそういうんだから、誕生日とは本来そういうもんなんだろう。
好きなヤツが隣にいるだけで、こうも違うのか、と今更だが気付かされる。
「だって、サボがうまれて来てくれなきゃ、私、サボに会えなかったもん」
だから私はサボが生まれてきてくれたこの日に感謝するの、と本当に嬉しそうにそう言うミアは最高に綺麗で、せっかく引き締めていた頬も無抵抗に緩んでしまう。けど、おれはそれを隠すようにぐいっといつもの帽子を引き下げた。
「…じゃあ、来年もまた、祝ってもらわねぇとな、」
ぽつりとこぼれたその言葉を、ミアが聞き逃すはずもなく。
「もちろん!約束ね?」
おれの好きな声でそう告げられ、今度は隠せるわけもなく、おれは口角をあげた。
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