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月夜の逢瀬





久しぶりに火をつけた煙管に己が口をつけ息を吸う。身体の中に取り込まれたものは白い煙へと姿を変えて夜の海へと吐き出された。



「あ、イゾウ。…やっと見つけた。」



後ろから聞こえてきた声は少し拗ねたような色を含んでいて、俺はその声の主にわからないようにクツリと喉を鳴らした。



「ミア」
「…なによ」
「機嫌、まだなおってねェのか?」



船縁に身を預けたままミアを招き寄せると、俺の質問には答えないままミアは素直に俺の腕の中へと身を寄せた。



「時間ならたっぷりあるじゃねェか。また今度行けばいい。」



煙草が嫌いだと言ったミアの頭の上を先ほどより長く吐き出した煙が通る。白い線が数十センチ離れたところで進行方向を失い、ゆるりと動きを鈍めて闇へと消えた。

今日は急に船の進路が変わって、ミアのお気に入りの島へ行くことができなかった。それからミアのご機嫌がすぐれない、というわけだ。



「別に、子供じゃないんだし…、拗ねてるわけじゃないからね、」



言葉とは裏腹にむぅと口を寄せて言う姿に愛しさを覚え、今度は隠すことなどせずに俺は喉を鳴らした。



「もう、笑わないでよっ」



特別綺麗でも気立てが良いわけでもねェ。
たかが女ひとり。怒った顔すら愛しいなんて、全く、海賊が聞いて呆れる。


だがそんな女ひとりを盲目的に愛してしまった自分も嫌いじゃねェ。


なんて、ガラでもねェことを思いながら、



「ちょっと聞いてる?」



と、眉を吊り上げてそう訴えてくるミアの唇を塞ぐことで、俺は自嘲気味に出そうになった笑みを飲み込んだ。








(ちょっ、煙草臭いの嫌いだってば…!)
(なら、お前さんが好きになるまでやるまでだ)
(あっ、……んっ…!(!!))



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