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一生懸命生きてきた。そうしたら、誰かに頼る方法なんて知らないまま大きくなってしまった。
それはこの船に乗っても変わらなくて。



(…………届かない、)



だけど、この船のクルー、家族、は、それをよしとせず、私にもっと甘えるようにと促す。
ここの居心地の良さに慣れて、温かさに触れて、私の心も柔らかくなっちゃったらしい。なかなか上手く甘えられない私だけど、少しずつ勇気を出してみようと思った。



「あの、イゾウ…」
「ん?どうした?」



書庫の中、本を片手にしているイゾウに声をかける。邪魔をして怒られてしまうんじゃないかとドキドキとしたけど、そんなことはなく、イゾウは視線をあげてこたえてくれた。



「ああああのねっ、」



例えば、台になる椅子を持ってきたり。
例えば、他の所から借りたり買ったり。
例えば、この本を諦めたり。

いつものオプションを振り切って、イゾウに取ってと頼む。
それだけのことが、頼るってことが、私には戦闘で勝利をあげることよりも難しい。



「もし、…もしも、イゾウが、嫌じゃなければ、」



ああ、手に汗が、。
慣れないことはするものじゃない。でも、もっと皆と近付きたい。



「一番上の本、取るの、手伝ってくれないかな、」
「…………、」
「と、届かなくてっ、、あっ!でも嫌なら全然大丈夫!!」



言えた。と、ほっとしたのも束の間、びっくりしたようなイゾウの顔に反射的に言葉を続ける。
だけどイゾウはふっと笑って、本を閉じてこちらまで来た。



「どれだ?」
「えっ、あっ、そ、そこの、上の……」
「これか?」
「あっ、その右の、」
「……ほらよ」



軽々と目当ての本を取ったイゾウは、柔らかな笑のまま私にそれを渡す。



「ごごごごめんっ、」



それを落とさないように慌てて受け取って、お礼を言った。だけど、それは私なりの独りよがりなお礼だったみたいで。



「違ェだろ?」



ピン、と、軽く額を弾かれる。



「…??」
「謝ってどうすんだよ」
「あっ。ごめ、…………ありがとう、」
「おう」



今度はイゾウの骨ばった手でくしゃりと髪を撫でられた。











(イゾウって、手、大きいんだな……、)







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