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持ちつ持たれつ





「ペンギン、ありがとう」
「は?」
「さっき、助けてくれたでしょ?」
「ああ…」



さっきまで発砲音や血の気の多い野郎どもの雄叫びで騒がしかった船の上も、今は打って変わって静かな波の音とクルー達の歓喜の声しか聞こえない。



「別に助けたと言うほどでもないが…」
「またそうやって謙遜するー」



皆の姉貴分のミアは俺の隣に腰を下ろすと、手に持っていた酒を煽り、反対の手に持っていたグラスいっぱいの酒を俺に手渡した。




「おつかれさま。今回の敵、結構強かったね」
「そうだな。…と言っても俺達の敵じゃなかったが」



にやりと笑って見せると、ミアも同じ顔をして横目で俺を見た。



「なーんか、他の皆は弟って感じだけど、ペンギンはしっかりしてるから頼りになるわ」



ぐい、と、もう一口酒を喉に流し込んで、ミアは甲板で騒ぎまくる“弟たち”を見ながらそう言った。



「それは俺があいつらより年上に見えるってことか?」
「そうは言ってないわよー。って言うか、その発言私に失礼なんだけど。」
「………すまん」



俺たちよりも幾分か年上のミアは俺の謝罪をカラカラと笑って聞き流す。
確かに、聞こえ方によっては失礼だな。深読みの深読みぐらいしないとわからんが。女とは実に難しい生き物だ。



「まーいいわ。私が年上なのは事実だし。ババアって呼んだら許さないけど。」
「心配するな。一生呼ばん。」



死にたくはないからな。



「ふふ。ま、私が言いたかったのはそうじゃなくてさ」
「?」
「んー。なんていうか、ペンギンが一番安心して背中任せられるなぁって思って」



嬉しい言葉に、少しだけ頬が緩んだ。それを誤魔化すように酒を飲む。



「それは、……光栄だな」
「でしょ。だからもっともっと強くなってねー」



ミアの挑戦的な笑みと言葉に乗せられる俺はまだ子供か。



「すぐに、追い越して見せるさ」



それは誓いでもなく決意でもなく、言うなればこれから起こる事への予言。



「ミアこそ、俺を幻滅させるなよ」
「言ったなコノヤロ!」



ニヤ、と帽子の下で不敵に笑えば、ミアはそれを嬉しそうに見返して「私だって負けないから覚悟しててよ」と一気に酒を空にした。













(二日酔いしても知らないからな)
(………そこはちょっと優しさを見せてはどうだろうか)
(ミアは弱いくせに飲むからな。年上ならちょっとは学んでくれ)
((しっかりしすぎもよくないな…))








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