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あの時の光景が目に焼き付く。
赤い、怖い。
大将がエースの弟に、そしてエースが、。



「……っ!」



ハッとして目を開けた。
ばくばくと心臓が鳴って、浅い息を吐き出す。



「………、」



あのときの一瞬が、まるでトラウマのように私を襲う。
それは、あの頂上戦争が終わって数週間経っても続いて。



ひと呼吸。ゆっくりと息を吐き出した。
真っ暗な部屋の中で、じっとりと汗をかいている事に気付く。少しだけ暑さを感じて、もぞりと布団の中で身を動かすと、隣で寝ていた影も一緒に動いた。



「…なに、また眠れねぇの?」



掠れた声でそう発したのは、大好きなエースで。その声を聞いただけで私はパニックになりつつあった思考を落ち着け、ほっと胸を撫で下ろす。



「ごめん、起こしちゃったね」



小声でそう言うと、エースはふっと笑って私の身体を抱き寄せた。じんわりと伝わる体温に、どうしようもなく不安になっていた心が解放される。



「また、あんときの事考えてたんだろ」
「………うん。エース、生きててよかった。」
「あほか。おれは死なねぇって言っただろ。」
「うん。言った」
「弟ともそう約束したし、ミアとも約束してるし。おれは約束はやぶらねぇ。」
「うん。でも、エース死んじゃうかと思った」
「ミアをひとりにはしねぇよ」



海賊になってあんなに大きな戦いをしたのは初めてだった。それが理由か。はたまたエースの命がかかっていた事が理由か。
私はあの戦争の後、必要以上に感傷的になっている。そんな私をエースは面倒臭がる事なく抱きしめてくれて。弱い自分が嫌になるけど、今は、今だけはエースに甘えさせて欲しい。



ただただエースが生きている事実が嬉しくて。
目が覚めると側にエースがいて、抱きしめてくれるのが嬉しくて。



「ね、エース」
「ん?」
「もっとぎゅうってして」



力を強めたエースの頼もしい腕は、私を安心させてくれる。
ふっと笑ったエースは、そのまま私の髪に口づけた。



「もう一眠りするか」
「うん、」



エースの温かさが伝わるまどろみの中で、私はもう一度目を瞑った。






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