見上げた空に君がいる
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あれからどれくらいの時がたったかなんて、そんなの数えてない。
目の前が真っ暗で、先が見えなくて。エースがいない日々は私にとってはあってもなくても変わらなくて。
『ばかじゃねぇの?おれは死なねぇよ』
そう言って私の不安を拭ってくれた笑顔はもういなくて。
初めて会った時は、なんて乱暴な男だって思った。
家族になった時は、慣れない仕草で挨拶をする姿が可愛いと思った。
失敗した時は、話を聞いてくれて慰めてくれた。
いい事があった時は、両手を上げて一緒に喜んでくれた。
好きだって気付いた時は、少しよそよそしくなってしまって、何で避けるんだって怒られた。
好きだって言われた時は、震える声で返事をした。
初めて抱きしめられた時はお互いの体温に二人で照れた。
初めてキスした時は、優しくて甘くて、目眩がした。
初めて同じベッドで寝た時は、胸がいっぱいになって思わず涙がこぼれた。
喧嘩した時は、胸が張り裂けそうになってたくさん泣いた。
仲直りしたときも、やっぱりほっとしてたくさん泣いた。
いっぱい色んな所に行って二人でたくさんの物に触れた。
思い出は尽きる事がないけれど、その思い出はもう増える事はなくて。
随分前から、エースはもう私の一部になっていた。
だから、あれからずっとどうしていいかわからなくて、迷子の子供みたいに泣いていて。
「ね、エース。私さ、…決めたよ。」
だけど不思議だ。
エースがいなくなったから自棄になっていたのに、このままじゃいけないって、そう思わせてくれたのもやっぱりエースで。
エースとの思い出を辿る度、エースが私に話しかけてくれて、心が穏やかになるのを感じた。あの輝いていた日々が、ずっと忘れる事は出来ないあなたとの時間が、私を少しずつ強くしてくれて。
潮の香りが暖かい風に乗って私の鼻孔をくすぐる。
それはエースが隣にいた時と変わる事はなくて。
「エースはもういないけどさ、私は生きてるから、」
皆にもたくさん心配かけた。
だから私も、前へ進まなきゃいけない。
だけどそれはあなたを忘れることではなくて。
「エースのことはずっと好き。ずーっと、大好き。だけどね、」
私は、あなたもいるはずだったこれからを生きる。
「私、強く生きるよ。エースがいなくても、エースに胸張れるように」
きっと、寂しくなる時もある。
泣きたい日もくる。
「だからさ、エースはどーんと構えて、そこで私のこと見ててね!」
いひひ、と無理に作った笑顔は、いつかエースが好きだと言ってくれたそれで。少しずつ、この笑顔も自然に作れるように。
だから、ずっと見守っていてね。
会いたくなったら、空を見上げるから。
エース、大好きだよ。
ねぇ、エース
――ありがとう。
なぁ、ミア。
なーに、エース?
おれ、海も好きだけど空も好きだ。
えー、私は海の方が好きだなぁ。海賊だし。
そりゃ、おれも海は好きだけどよー。でも空も、青くて海みてぇじゃねぇ?
………そうかなぁ?
ぜってーそうだって。つーか、海が青いのは空があるからなんだぜ!
うそ、知らなかった…!エース意外と物知りだね!
意外は余計だっつーの。
あ、ごめん。えへへ。
………へへ、やっと笑ったな
……、…ありがと。
おう。なぁ、今度から、落ち込む事あったら空見ろよ
空?
そう、空。上みてりゃ、いい事あるって。その方がおれもキスしやすいし。
……スケベ。
うっせ。して欲しいくせに。
……。空見たら、エースがいてくれるなら、…ずっと上向いてようかな、。
………おまえ、本当にいきなりドキッとすること言うよな…。
べ、別にいきなりじゃないじゃんっ!もういいよーっ…
嘘だって。おれの方が身長高ぇし。上見たらおれがいるのは当たり前だろ。つーか上向いてなくてもずっと側にいるけどな!!
あはは、そんな叫ばなくてもわかってるよー
笑ってんじゃねー。
ふふ。ねぇ、エース。私今空見てるんですけど。
………目潰ればか。
へへ、うん…。
……。
…いいことあっただろ
……うん、あった。
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