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素直じゃない僕は意地悪な彼氏に身を扮する





好きな子ほど虐めたくなるって、ホントによくできた言葉だと思う。
それはまさに今僕に当てはまっている言葉で、ミアが僕の彼女になった後もなかなか優しい彼氏になることが出来ないでいる。
つまり、僕の行動は全て裏目に出ているわけだ。主に言葉の面で。

まぁ、それが分かりきってるからといって、すぐに変われるものでもないんだけど。



「あ…。」



そんなことを考えながら船内を歩いていると、前を歩くミアが見えて年がいもなくドキッとする。
前が見えないくらいの大きな箱を抱えてふらふらと歩くその姿は、頼りなくて守ってあげたくなるほど可愛い。だけどそのまま重い物を僕が彼女に持たせるわけもなく、ましてやふらふらと危なっかしい姿を見せられては、歩いてそばによるのも遅すぎて。僕は小走りでミアに追いつきその肩をぽんと叩いた。



「ねぇ、邪魔なんだけど。」
「わ!ハルタ…!びっくりしたー」



初っ端からかける言葉を間違ったなんて、百も承知だ。だけど出てくる言葉は制御できるものでもなくて、僕はいつもあとで後悔する。


するりと、自然にその大きめの箱をミアから奪い取って、僕はまた口を開いた。



「どこ?」
「えと、キッチン」



さも興味無さそうに頷いて、僕はミアを置いてスタスタとキッチンに向けて歩き出した。まだ一緒にいたいのは山々だけど、これ以上口を開くと何を言ってしまうかわからないからね。



「あっ、ちょっと、ハルタ!」



だけどそんな僕の意思を無視してミアは僕に駆け寄る。
だからほら。僕はまた口を開いてしまう。



「なに?」
「なにじゃなくて。ありがと。手伝ってくれるんでしょ?」
「…あのままミアに任せてたら通行の邪魔でしょ。ふらふら通路塞いでさ。もしかしてそんなことも分からなかったの?」
「ハルタァー…。もうちょっと言い方とかさぁ…仮にも彼女なんだから…」
「ふーん。じゃあ彼女にはどんな言い方したらいいわけ?」
「え?うーん…。重そうだね、僕が持つよ!とか、君にこんな重い物持たせられないよ!とか?」



そんなこと、ミアを見た瞬間に思ってたよ。



「へぇ、ミアってそんなのが好きなんだ?意外と乙女だね」



だけど素直じゃない僕はまた減らず口をたたいて、馬鹿にしたようにミアを見下ろした。



「ちょ!いっ、いいじゃん、別にさぁー…」



むぅ、と、機嫌を損ねてしまったミアは尚も僕の隣を歩く。またやってしまった、と、心は焦ってるのに、僕はまた素直じゃない言葉を言うので精一杯だ。いい加減、自分が嫌になってしまう。



「別にダメとは言ってないけどね。」



これが今の僕には精一杯で。



きっと君には無愛想で意地悪で、全然優しくない彼氏に映ってるだろうね。
君は僕と付き合ったことを後悔してるのかな。そうじゃないといいけど。


いつか君に僕の精一杯が届きますように。






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