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所詮、惚れた方の負け





ねぇ、昨日の夜はどこにいた?
ねぇ、服についてる残り香は誰のもの?
ねぇ、あなたは私のことちゃんと好き?



そんなことばをぐっと飲み込んで、わたしはイゾウに笑いかける。


やだ。他の女のところになんか行かないで。


そんな一言が言えなくて、ただひたすらこの黒い感情を押し殺して、笑顔を作った。



「今日さ、夜部屋行ってもいい?」
「今夜か…」



こんなやりとりですら、緊張して手に汗をかく。彼女、なのに、おかしいと思うけど、それでもこの場所は他の人には譲りたくない。



「今日は先約があるから、悪ィな。」
「そっか、…。」



断られるのは初めてじゃないけど、理由が他の女のところに行くからというのがとても辛い。言わなくても、もう経験でわかる。
イゾウは強くて優しくて格好よくて素敵な人だけど、恋人としてはたぶん誰よりもダメな人だ。そして私は、そんな恋人を容認してしまうほどにはダメな彼女で。
だって、やっと手に入れたイゾウの彼女っていう立場。
最初はイゾウが他の女のところに行くのが嫌で嫌でたまらなかったし、だったら別れようとも思った。でも何をされても、こんなに浮気されても、結局は嫌いにはなれなかった。だから、私が出した結論は、他人から見たら到底理解できないもので。

だって。
他の女にこの場所を譲るくらいなら、私がこの辛い想いを我慢した方が何億倍もまし。


だって、



「…ったく、そんな顔してんじゃねェよ。明日の朝飯は一緒に食ってやるからよ」



そう笑って、くしゃりと頭を撫でてくれた行為は、たとえ他の女に愛を囁いていても、たとえ他の女を激しく抱いていても、私だけに与えられる特権だと信じてるから。










(なんて、本当は本音を吐いて縋って泣いて、別れを告げられるのが怖いだけなんだけど、。)






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