おあずけキス
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幼稚園も小学校も中学校も高校もずっと一緒で、たくさんの初めてもローと一緒だった。それは幼馴染みで腐れ縁で兄妹のようなものだったけど、私にとっては違っていて。物心ついて女の子として振る舞うようになった時から、私はローの事が好きだった。それは誰にも伝えた事はなかったけれど、歳を追うごとにその想いは大きくなっていって、もはや私を苦しめる存在となっていた。
だから言ったんだ。
ローに、好きって。
「………ごめん、今なんて?」
「だから、おれも好きだっつったんだよ」
この今まで積み上げて来た関係が終わってしまったとしても、後悔はしない、と。そう決心して、戦地に赴く兵士のような気分で、言ったのに。
自分の部屋でだらりとだらしなくベッドの上で雑誌を読んでいたローは、何でもない会話をするノリで私に返して来た。
「あのさ……」
「あ?」
「私、幼馴染みとしてローの事好きだけどさ、今のは、そういうんじゃなくてさ、」
「ふざけてんのか。当たり前だ。」
「………」
もはやふざけているのは私じゃなくてアンタだろ、と言いたくなったけど、それをぐっと飲み込んで雑誌を読むローに近付く。恋するドキドキもなにもあったものじゃない。
「……ローはさ、私の事、好きなの?」
「さっきも言っただろ」
「うん、言ったけど…」
「なんだ?信じねぇのか?」
「そういうわけじゃないけど……。…いつから?」
「ガキん頃」
「うそだぁ。だって彼女いたじゃん」
「それとこれとは別だろ。今はいねぇし」
「えー。私ショックだったのに…」
「……そういうミアはいつからなんだよ?」
「…小さいときから」
「知ってる」
にやりと笑ったローが雑誌から目を上げて、私の視線を奪う。
「で?ミアはおれの彼女なのか?」
「えっ!いや、その、………そうだと、嬉しい、」
「じゃあ、決まりだな」
なんだこのぐだぐだ感は、とそう思ったけど、なんだかこの感じが私たちっぽくて、ふっと笑みがこぼれた。
「へへ、ローが彼氏かぁ」
「んだよ、気持ち悪ィ笑い方すんな」
「うるさいなぁ。………もう幼馴染みじゃないんだからね、」
「わかってるよ、ばーか。」
そう言ったローは少しだけ照れていて、それだけでも私は嬉しくなって、もう一度くしゃりと笑った。
(ど、わ!!なにロー!??)
(………なにってキス)
(きききき、無理!!(ひー恥ずかしい!))
((ムカッ)彼女なんだろ?そんくらいさせろ)
(無理だってちょっと待ってだって今までそんないやホント心の準備が(あわあわ))
(うっせーおれは十数年待ってたんだよ(これ以上お預けとかふざけんな))
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