top
name change






運悪く海賊に捕まって、病気がちな兄を人質に取られ、その時の私に残された道は白ひげ海賊団に入ってハルタに取り入り隙をうかがって殺す事だった。
ただひとつ。
この1年の誤算は、ハルタを好きになってしまった事。



あれから2週間。
憎い海賊の元に戻って来た私は、暗く狭い部屋の中に閉じ込められたままだ。私が帰って来た時には、兄は、この船にいなかった。何が起こったかなんて、聞きたくもない。海賊達のニヤニヤとした気持ちの悪い顔がこびりつく。

結局何も救えていない。

あまりのやるせなさに、歯を食いしばってぎゅっと膝を抱えた。








外がやけに騒がしい。
だけど、それももうどうでもいい。
もうこの世界から、消えてしまいたい。




「…こんなとこにいたの。随分な扱いだね」




だけど、キィ、と、ふいにドアが開いて聞こえてきた声に、懐かしいような胸が締め付けられるような想いに襲われ、反射的に顔を上げた。



「…………ハ、ルタ…。どうして、」



呆然と私の口から出て来た言葉は宙を彷徨う。
ここにいるはずのない人の存在に、まさか幽霊になって出て来たんじゃ、なんて思う。



「どうしてじゃないでしょ。ミアがいきなりいなくなるから迎えに来たの」



さも当然のように私に近寄ってきたハルタに、コツンと頭を叩かれた。それと同時に、ぎゅうと、胸を鷲掴みにされる。



「…いきてる、」
「生きてるよ。僕が簡単に死ぬとでも思った?」
「でも、わたし、」
「うるさい黙って」
「…っ、」



そう言われて、口を噤む。
じっと真剣な目で私を見るハルタが、静かに口を開いた。



「事情は知ってるよ。ただ、ひとつだけ確認させて欲しいんだよね」
「………」
「僕を好きでいてくれたのも、兄のため?」



違う。それは、違う。
ハルタを好きになったのは、誤算だった。
好きじゃなかったら、こんなに苦しくない。

溢れる想いが言葉にならなくて、私は首を横に振った。



「そう。じゃあ、僕を好きって言ってくれたのは嘘じゃないんだね。よかった」
「う、嘘じゃない、。ハルタが、好き。」



やっと、そう絞り出して、ハルタを見ると、そこには満足そうに笑う大好きな人がいて、じわりと鼻の頭が熱くなり視界がぼやけた。



「じゃあ、今回の事はミアがどっかの国の女くらい僕の事を情熱的に愛してたからって事で許してあげるよ」



ふわりと、前みたいに頭を撫でられて、辛い事とか我慢してた事とか、色々な想いが胸から流れ出して、声を上げて泣いた。
だけどハルタは変わらず、幸せだったあの時のように、私を優しく包んでくれた。










(じゃあ、行こうか)
(あ、でも外……)
(大丈夫。この船に乗ってるのはもう僕とミアだけだから)
(え、)
(ついでにミアのおにーさんも迎えに行っとこうか)
(え?え??)
(生きてるよ。ここから2つ先の島。お荷物だったから途中で投げ出されたんじゃない?)
(………!!!)
(あ、でもその前に誰かさんに刺された傷口痛むから膝枕でもしてもらって休もーっと)
(あ、え、ハルタあの、(おにいちゃんは、?(あせあせ)))
((少しくらい意地悪したっていいでしょ))






| TEXT |




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -