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「僕納得できなーい。」



棒読みってぇのが合ってるかはわからねェが、目の前のベッドに転がるハルタはその言葉を発した。



「ミアか」
「うん」



腕を組んで前を向いているハルタの目には、この部屋の景色なんて映ってねぇ。



「あのさぁイゾウ」



変わらず前を向いて抑揚のない声で俺を呼んだと思ったら、ハルタは急に横の丸椅子に座っている俺に視線を向けた。
このふざけた笑顔は、まァ、悪い予感しかしねェな。



「大人しくここを出ていくか、僕に気絶させられるか、どっちがいい?」
「俺がここにいる理由、よくわかってんじゃねぇか」
「まーね。見張り役も大変だよね。で、どうするの?」



あの日、ミアは消えた。



「…あれから1週間以上経ってんだ。今更どうする気だ?」
「会って話するだけだよ」
「会うったって、居場所も分かんねぇじゃねぇか」



船に乗っている全員騙されてたんだ。
自分もその1人なのだから呆れる。自嘲気味に笑うと、ハルタは不機嫌そうに俺を見た。



「知ってるよ。ミアがどこにいるのかなんて」



その言葉にハルタを凝視する。



「………」
「…なに」
「知ってる事、全部言え」
「……それは、ここから出る条件?」
「ああ」



数秒だけ、目を合わせるだけの会話をして、すぐに視線を逸らしたハルタは「仕方ないな」と溜息を吐いた。



「元々僕を殺すためだったんだよね、ミアが来たの」
「は?」
「名前忘れたけど、僕の隊が数年前にある海賊を潰したわけ。」
「……その仕返しか?」
「ちがうよ」
「…?」



ハルタは不機嫌を纏ったまま話を続ける。



「ほんとムカつくんだけどさ。その海賊の船長の兄だか弟だかが僕に復讐しようと考えた」
「…で?」
「で。運悪くその時捕まっちゃったミアとミアの兄が使われちゃったの」



はぁ、と今度は大袈裟に溜息を吐く。



「つまり、兄を人質にでもしてミアを使ったってことか」
「そう。その通り」
「つーか、…お前さん、知ってたのによく刺されたな…」
「……信じてたんだよね、僕。」



少しだけ目を伏せたハルタは、いつもの雰囲気は全くねえ。



「ミアは話してくれるって、信じてた。」
「………」
「でも話してくれなかった。てか刺された。ほんと有り得ない。」



ぎゅっとシーツを掴んだハルタの手に力がこもるのがわかった。



「最後、すごく辛そうな顔だった」
「……」
「だから僕はミアに会いにいく。聞かなきゃいけないことがあるから。」



止めたって、無駄だ。と、直感でそう感じた。



「で?イゾウは僕を止めるの?」
「いいや。話してくれたからな。約束は守るぜ」
「そうこなくちゃね」



にこりといつもの笑顔を見せたハルタに、俺は心の中で全てが上手く運ぶよう祈った。





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