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最初から裏切ってた。
それを忘れたことはなかった。
でも、だから。
1年という時間は私には長すぎたのかもしれない。



「ちょ、……ミア…、これ、なんの冗談、」



絞り出すようなあなたの声に私は口を開くこともできない。
一度口を開いてしまうと、きっと、溢れ出してしまうから。
だから、私は出来るだけ冷たい目であなたを見下ろすの。


私の右手にはぬるりとした温かい感触。
さっきまで私の右手を握っていたハルタの手はひやりとしている。
一瞬、強く、強く右手を掴まれたけど、すぐにハルタは悔しそうに顔を歪めて私の目の前で膝をついた。



「………ッ、」



ドクリドクリと流れ出した私の右手にまとわりつく血は目の前にいるハルタのもので。まるで全てがスローモーションのように動いて見える。
ハルタが倒れると同時に、するりとナイフから手を離した私は呆然とその場に立ち尽くした。
床を染めていく赤はどんどん広がって、まるで海が赤くなってしまったよう。


きっと、ううん、間違いなく、このまま血を流し続ければこの人は死んでしまう。



"自分でやったことなのに"



フッと心の中に浮かんできた言葉にはっとして、荒く呼吸を繰り返しながら私を見上げるハルタを見て自嘲気味に笑った。



私はこの人に死んでもらわなければならない。
これ以上ここにいても、いいことなんてなにひとつない。




ごめんね、ハルタ。
信じてくれてありがとう。
裏切ってごめんなさい。
どうか、私を恨んでね。
あなたに死んでもらうことが私に課せられた使命だから。
それだけは変えることはできないけど。


でも、


でも。


私の心があなたを想うことだけは、どうか、どうか許してください。


さようなら、大好きな人。








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