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make yourself into a next stage for your love!!






「イゾウはミアで飽きねーのかな」



口に運びかけていたサラダをぼとりと落とし、目の前で食事を続けるエースを見た。
少し早めの昼食をとろうと食堂に来たら、エースがいたので一緒に座った。
自隊長であるエースとは、もともと歳が近いため、隊長隊員関係なく言いたい事を言い合う仲だ。



「………喧嘩なら買うけど」



止まった箸を進める。



「喧嘩じゃねーし」
「じゃあ何なのよ今の。どういう意味?」



ピリリとした空気を纏った私を然程気にしていないようにエースは目の前の昼食を胃の中におさめていく。



「だってよ、お前全然女の魅力ねぇじゃん」
「なんでよ。」



ちょっと、ドキリとした。
確かに、ナース達と比べると私は女らしくはない。戦うし、鍛錬大好きだし、おしゃれにはそんなに興味ない。



「なんつーの?全然色気ねぇし」
「……否定できないのが辛いけど」
「つーかイゾウの方が色気あるよな。俺お前みたいなの絶対無理。仲間としては最高だし背中預けても安心できるけど」



がーん。
でも確かに。
エースに恋愛対象として見られるなんてこっちとしてもお断りだが、イゾウの方が色気があると言われて否定は出来ない。
今まであんまり考えた事なかったけど、イゾウは私みたいなので満足なのかな…。
あ、やばい。柄にもなくネガティブだ。



「はー、食った食った。じゃ、先甲板行ってるからな」



がたりと席を立ち、自分のトレーを片付け手を振り出て行く。
2番隊は今日は午後から鍛錬だ。体を動かす事は好きなのでいつもだったらうきうきで返事をするのだが、今日は何か気持ちが沈んでしまって、エースには片手を上げただけで返事をした。



ふう、と意味もなく息を吐き出し食事を再開する。
するとことりと前の席にトレーが置かれた。
タイミングが良いのか悪いのか、それは今しがた話題にあがっていたイゾウで。



「どうした?いやに沈んでるじゃねぇか」
「イゾウ……」



じっとイゾウを見つめる。
流れるような目線でこちらを見るイゾウは、確かに色っぽい。まだ昼間なのに。



「エースになんか言われたのかい」
「んー、イゾウは何で私と付き合ってるのかな、って話してた」
「あぁ?」



眉を上げて聞き返すイゾウに、私はお茶を一口飲んでから答えた。



「ほら、私って女の魅力皆無でしょ?」
「…………何故そう思う?」
「え、だって…。可愛くないし、どう頑張ってもナースみたいになれないし……それにその辺の男より強いし」



さすがに本人に色気がとは言えず、言葉を変える。
あ、イゾウあきれた顔してる。



「海賊やってんだ、強いのなんて長所だろォが」
「まあ、そうだけど…」



それは正論なので、肯定するしかない。
でも、なんか、そういうことじゃないのだ。
なんとなく、先が続けにくくなって、視線を落としデザートのプリンをスプーンでツンツンつついた。



「それに、別に言うつもりは無かったが、」
「…?」
「ミアは俺といると、随分と女らしくなるみてぇだぜ」
「えっ!」



まさかの発言に、本当にまさかと思う。
呆けた顔をしているであろう私を見てクツリと笑い、今この食堂にいる時もそうだと言う。
そんなはずはない。私はいつも通りに接しているし、エースがいたときから変わった行動なんて取っていない。
と食堂での行動を繰り返し思い出し、はたと気付く。

あれ、ちょっと待ってよ。
私、エースがいた時こんなきちんと座ってなかったよな。肘だってついてたし、咀嚼しながら応答してたかも。
でも、イゾウが来てからはちゃんと座って肘だってついていない。食べながら会話なんてもちろんしてないし、髪だって手櫛だったけど整えてたかもしれない。それに何より、俯いてプリンつんつんなんて他のヤロー共の前では絶対しない。



「そ、そんなこと、無いと思う、けど…」



居たたまれなくなって、頬を朱に染めながらイゾウをちらりと見る。
たぶん、これも“女の子っぽい”行動に入っているのだろう。
普段通りに振る舞おうとするけど、意識しても何故かそれが出来ない。意識してしまったからこそかもしれないが。
多分、今までも私は無意識でイゾウの前では女の子になってしまっていたんだ。


は、恥ずかしすぎる…!



イゾウはそんな私を見て、またクツクツと笑い、だから知らなくてよかったんだと言った。



「気付かなけりゃ、お前のこの表情は俺だけの物だったのになァ…」
「だ、大丈夫だよ。イゾウの前でしか、こんなならないし」
「嬉しい事言ってくれるねェ」


テーブルに肘をつき自分の頭を支えてそう言うイゾウは、やっぱり色のある目で私を見ていて。



「……イゾウは、私にもっと可愛くなって欲しい?」
「俺には今のままで十分だが…」
「そう?」
「俺のためにそうしたいって思ってンなら、期待しとこうじゃねぇか」



余裕のある笑みを向けられて、この人に見合う人になりたい、可愛いって思われたい、と思ってしまった私は仕方ないと思う。


戦うのが好きだって、男勝りだって、

やっぱり私も、恋する女の子だったんだ。





(さてと。まずは手始めに、食堂でなかなか拝めねぇミアの照れた顔を、呆けたアホ面で見ていた奴らを締め上げるかねェ)











−後日談−
「あ、ああのっ!」
「あらミアちゃん。珍しいわね、どうしたの?」
「ナナ、ナースのお姉様方!私に、おけ、おけ」
「(桶?)」
「、お化粧教えてください…!」
「!!!」
「(言った…!)」
「ちょ、ちょっと皆―――!!!!大変来てー!ミアがついに目覚めたわよー!」
「(!)ちょ、声大きいです恥ずかしいですやっぱり帰りますごめんなさい!!」
「(がしり)まぁ待ちなさい。ずっとこの時を待っていたんだから、逃がす訳ないじゃない」
「(笑顔のナースさん達が怖い!)」







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