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「もう、エースってばまた間違ってる」
「計算苦手なんだから仕方ねぇだろー?」



報告書をマルコに提出する前に食堂でチェックしてるといくつかの間違いに気付いて指摘した。エースはそれに不満顔をしたあと、すぐにいつものあの笑顔で「でも俺にはミアがいんだからいいだろ!」と、ニシシと笑う。
それにつられて食堂の皆も、末っ子なら仕方ねぇとか、年上のしっかり者のミアが一緒だから問題ねぇな、なんてそんな雰囲気になる。


だけどこのエースは私の知っているエースとは随分かけ離れていて。
皆の前では人懐っこくよく私に甘えてくるエースだけど、二人きりになるとそれは逆転する。



「じゃ、マルコに出しに行こーぜ」
「うん」



席を立ってエースは自然に私の手を握るけど、それは単に仲のいいカップルを見せつけるためのものじゃないって、私は知ってる。


だって、ほら。


食堂を出てすぐの所で、私の手は進行方向とは別の方へと引っ張られた。反射的に少し声を上げたけど、こんな事はもう慣れっこで、引っ張られた先の倉庫のドアの裏側にトンと背中を押し付けられた。



「頼りになるオネーサンとキスしたいんだけど」



にこりと先程と変わらない笑顔でそう告げるエースだけど、目は先程とは正反対で、私の答えを聞く前にエースは私にキスをする。


数秒のキスのあと、ちゅっとリップ音をさせて唇を離したエースにどきりとする。
倉庫のドアは閉められてはいない。開け放されたままのドアの裏側で、音を立ててキスをして、誰かにバレないなんて保証はない。羞恥心に顔が赤くなった。

だけどそんな私の思考なんてエースには関係ない。
一瞬だけ間を置いて更にキスを続けようとしたエースを私は「待って」と止めた。



「ドア、閉めてよ、」
「なんで?」
「恥ずかしい…」
「じゃあ開けとく」



酷い、。
でもこれが私の知っているエースで。
そして、



「お願い」
「やだ」



意地悪く笑ったエースを全力で拒否出来ないくらいには、私はこの人に溺れている。年下をフル活用するかのように振る舞う無邪気な彼も、二人きりになると強気で意地悪な彼も、どちらも大好きな人なのだ。


奪われた唇に一緒に酸素も持って行かれて、少し苦しくてエースの胸を押す。だけどその手はあっけなくもエースの左手に捕まって、壁に縫い付けられた。



「んん、…っ、」



開け放たれたドアから声が漏れないよう、なるべく声を出さないように、それだけを意識していたはずなのに、それはエースの手が服の中に入って来たことでいとも簡単に崩れた。



「やっ、エースっ!」
「なに?」
「何、じゃなくて、」
「いいだろ?」



また唇が触れてしまいそうなくらい近い距離で、強気な目を向けるエース。
だけど、ここでそういう事をするのは流石に嫌だ。



「部屋が、いい。」
「俺はここでミアが羞恥心に耐えてる姿が見てぇけど」
「むっ、無理!絶対!ドア、開いてるし、」
「だからいいんじゃねぇか」



ニヤリと笑ったエースが今度は私の髪を掻きあげて、耳元で低く囁いた。



「だいたい、部屋でも一緒だぜ」
「な、に、」
「覇気使えるヤツなら、この船で何があるかくらい把握出来るからな」
「は?どういう意味…」
「昨日ミアが部屋で喘いでたのも、我慢出来なくて俺に懇願してたのも、全部筒抜けってことだよ」
「そ、…………、」



そんなこと、。
あるわけないとは言い切れなくて、一気に全身が熱くなった。
皆がそんな悪趣味なことしてるわけない、そんなことわかってる。だけど一度それを考えてしまったら、死んでしまいたい程恥ずかしくて、眉をヘの字にしたまま泣きたくなった。



「その顔、そそる」



何も言えなくなってしまった私を見てそう呟いたエースは、私の首筋にキスをして、弧を描いた唇からもう一度何か囁くと服の中で止まった手を再び動かし始めた。













“言っとくが、お前が今本気で嫌がってない事も、俺にはわかってんだからな”








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