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because I love you





「静かだねぇ」
「だな」



波の音しか聞こえない深夜の甲板。
みんな寝静まっていて、静か過ぎて怖くなるくらい。
そんなところに、恋人のイゾウとふたりきり。



「月出てないね」
「新月だしな」
「そうなの?でもどっちにしても、雲あるから見えないね」



雨が降りそう、とまではいかないけど、適度に空を覆う雲は、輝く星たちを80%くらい隠してしまっている。



「星も見えねぇとはついてねぇな」
「ここからじゃ船室のドアも見えないくらい暗いしね」



船室から離れた甲板の先で、項垂れながら「これじゃ何も見えない」と不貞腐れる。



「何も見えねぇ、か」
「え?」
「じゃ、好都合」



にやりと笑ったイゾウは、抵抗する間もなく私の両手を左手で拘束した。



「え?ちょ、イゾウ?」



そしてそのまま私のブラウスの一番上のボタンをプチリと外す。



「!?ちょ、なにしてんの!?」



じたばたと掴まれている手を動かしてみるけど、私のより一回りは大きいイゾウの手はびくともしない。



「いいじゃねェか。何も見えねぇんだしよ」



そういいながらプチリプチリと片手で器用にボタンを外していく。



「そ、そういう問題じゃなくて、ここ、外…!」
「見えなきゃ中も外も一緒だろ」
「いっ…!一緒じゃないよ!や、やだ、!」



だけど、私の抵抗もむなしく、数える程しかないボタンは、あっけなく最後のひとつまで外されてしまって。
生暖かい夜風がブラウスの端をめくらせて、肌が外気に触れる。



「…イゾ、」
「悪くねェな。色っぽいぜ」



上から流し目で見下ろされ、そんな風に言われて、恥ずかしさで気が狂うかと思った。
そのまま顔を寄せて、私の耳元にキスをしたイゾウは、手の拘束を解いた。
耳元のキスに私はゾクリと身体を震わせる。イゾウは私が耳元が弱いことを知っててするんだから、性格が悪い。
熱のこもった吐息が漏れて、それにクスリと笑ったイゾウは今度は私の唇にキスをした。



「ん、」



外気に触れる肌を意識してしまって、いつもよりキスが恥ずかしい。
でも、イゾウが目の前にいて隠してくれているから、少しだけ安心できる。

だけど、そんな私を裏切って、イゾウは私がキスで油断している間に私のブラウスを剥ぎ取った。



「!!」



吃驚して咄嗟に身体を離したけど、もう遅い。すでにブラウスはイゾウの手の内で、にやりと笑ったイゾウと目が合った。



「か、返してよ!!」
「大声出すと皆起きちまうぜ?」
「!!」



楽しそうに言ったイゾウは、手に持っていたブラウスから手を離した。
するとそれはあっけなくも夜の闇の中へと消えていって。



「あ!ちょっ…!!」



急いで手を伸ばしたけど、船縁から半身を出して伸ばした手は空をかく。
呆然と暗闇を見つめていると、私の両サイドにイゾウが手をついた。
背中にイゾウの着物がすれて、また気恥ずかしくなる。だけど、前を見せてないだけましだから、このままの体勢で不貞腐れれたように文句を言う。



「…あれ、お気に入りだったのに…」
「んなもん何枚だって買ってやるよ」
「部屋どうやって帰ればいいのよ…」
「俺が抱いて帰ってやる」
「………余計恥ずかしい」



クク、と肩を揺らしたイゾウは、「誰も見えてねェんだから、心配ねぇだろ」と言った。



「イゾウに、見えてるじゃん」
「俺も見ちゃいけねぇのかい」



そんなことないけど。
イゾウだけは見ていいけどさ。でも恥ずかしいじゃん。



「別にそんなこと、言ってないけど、。」



誤解はしてほしくない。でも恥ずかしいから、俯き気味に振り返ってそのままイゾウに抱きついた。



「じゃ、問題ねぇな」
「え?」



何か、含みのあるような言い方だったような気がして、目だけでイゾウを見上げた。
すると、急にふわりと身体が浮いて、船縁に座らされる。



「!!」



イゾウの行動は早い。
少し油断をすると、すぐにこうなる。



「イゾウ!降ろして…!」
「なんで?」
「何でって…、恥ずかしい、でしょ!」



いつも身に着けているものがないだけで、こんなに不安になるなんて。
さっきまではイゾウに背を向けていたり、イゾウに抱きついて隠していたから、まだ良かったけど。
イゾウより頭一個分高くなったここでは隠れることなんてできない。
夜風が肌全部に当たって、自分の体温がいやに熱いことが強調される。



「俺は見てもいいんだろ?」
「いい、けど、。でもここじゃなくたって、」
「俺はここで見たい」



落ちないようにしっかりと腰を抱いてくれるイゾウはとても近くて、イゾウの視線がまるで触れられているように感じられて、更に体温が上がった。



「俺には、月や星なんかよりも、価値あるぜ」



恥ずかしい。
本当に、恥ずかしい…!!



「も、イゾ、見ちゃ、だめ、!」



恥ずかしさが限界まで達して、胸の前で縮こまっていた両手を伸ばして、イゾウの両目を覆った。



「!」
「見ちゃだめ、」
「クク、本当に見えなくなっちまったなァ」
「うん、あきらめて」
「まァ、俺はどっちでもいいが。自分で手を封じてくれて、助かったぜ」



え?と思う間もなく、ぐっと顔を近付けたイゾウに、ブラの肩紐を噛み下ろされた。
















(だ、だめだめだめー!!!(わたわた))
(じゃあ、手離して拒否ればいいじゃねぇか。そしたらじっくり見てやるぜ?(ニヤニヤ))
(〜〜〜〜!!!!(どうしたらいいの!??(泣)))





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