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WHY ?





ぱちりと目を開けると、目の前にはハルタの寝顔。適度な温もりと目の前の幸せに頬が緩む。
今日は何も予定はないし、寝坊してもきっと誰にも怒られないから、もう少しだけこの空間を満喫しようと、寝てる間にいつのまにか万歳をするようにあげていた手を、ハルタの方へと伸ばした。


が。


じゃらり、


手首に違和感を感じて一気に目が覚めた。



「……なに、これ…」



両手が思うように動かなくて、顔を無理矢理頭上に向けるとそこには銀色の手錠と鎖。ご丁寧にもベッドの上に固定されていて動かすことができない。



「ちょっ、ハルタ!起きてっ!」



非日常的な状況に若干戸惑いながらも隣で眠るハルタを起こす。
呑気なハルタは、うっすらと目を開けると、私の腰に手を回し、ぎゅうと抱きついてきた。



「おはよー、ミアー」
「ちょっと、ちゃんと起きてっ」
「朝から元気だね」
「それどころじゃないって!何かわかんないんだけど手がっ…!」
「大丈夫だよー」



大丈夫じゃないよ!何寝ぼけたこと言ってんの!!
と心の中でつっこみつつこのふわふわな頭を叩きたい衝動に駆られたけど、それは私の手首がじゃらりと音を立てただけでいとも簡単に実行権を奪われる。



「ハルタぁっ、ちゃんと起きてよ…」
「声、泣きそうだね」
「泣きそうだよ」
「かわい」



こんな状況でも、好きな人に可愛いって言われるのは嬉しい。
ぎゅっと抱きつかれた身体は嫌がってはいないけど、どうせなら私もハルタを抱きしめたい。



「ね、ハルタ。これ、取って欲しいんだけど…」
「やだ」
「え?」



だけどハルタは先程と変わらず私の身体に顔を寄せて目を瞑ったまま平然と答える。
それに少しだけ焦りを覚えて、つられて私の口調もキツくなった。



「ちょっと、冗談じゃなくてマジで取って?」
「やだ」
「はぁ?」
「だってそれやったの僕だし」



はあぁぁぁぁ!??
パニック。これはもう、パニック。



「ふ、ふざけないで、」
「ふざけてないよ」
「取って!」
「取らない」



埒があかない。
パニックになりつつある頭で、ハルタは敵だと判断し、自分でどうにかできないかとガチャガチャと手首を動かしたり引っ張ったりする。でも私の期待とは裏腹に、それは一向に私を解放する気配を見せない。



「やだっ…!取れない…!!」
「だって取れないようにしたもん」



涼しい声でそう言ってのけたハルタは、いつの間にか体勢を立て直していて、肘をついたやや高い位置から私を見下ろしている。



「どうして、こんなことするの…っ?」
「ミアのこと、虐めたくなっちゃったから」
「は、」



にっこりと笑ったハルタの顔には嘘なんてない。
いつものハルタなのに、そうじゃない。
ふんわり笑って頭を撫でてぎゅってしてくれるハルタがいない。


早くいつものハルタに戻って欲しくて、ガチャガチャと無駄な抵抗を続けた。
だけど、ハルタはそんな私を見下ろしてにこにこしていて。ハルタが怖くて、早く元に戻って欲しくて、また優しくぎゅってして欲しくて、ぎゅってしてあげたくて。



「ハルタぁっ…おねがい、外して…」
「………ダメだよ」



その言葉に、ぽろりと涙が溢れる。
私何かしたかな。嫌われちゃったのかな。



「…ぎゅって、したいよ………」



一瞬目を見開いたハルタの口元が、ゆっくりと弧を描いた。



「抱きしめて欲しいの?それとも抱きしめたいの?」
「だっ、…抱きしめたいし、ハルタにぎゅってして欲しいっ、」
「ふぅん…欲張りだね」
「ッ、」



戻って。いつものハルタに戻って。
そう願いを込めて、



「おねがい、ハルタ、。」



そう言ったんだけど、。



「だめだよ。しばらくは、おあずけだからね。」



そう私に告げたハルタは、とても楽しそうに笑っていた。












((ねぇハルタ、どうして………?))







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